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「ご当主、やめてください。おれたちは、ただ静かに四人で過ごしたいだけなんです。まだ三歳になったばかりの朔夜が、叢雲の家に何をしたっていうんですか? どうして、あいつのことを目の敵にするんです!? 俺の息子や妻を見下すような発言は取り下げてください!」
「叢雲の家に婿入りした凡人のベータが、でしゃばるとは――いい度胸だな、耕助。ならば頭の悪いおまえにもわかるように言ってやる。あのガキは、この世に生まれてきたこと自体が間違いだった。あのガキが存在するだけで、ワシや叢雲の家は不幸になる」
本家の当主は毎年、離れに両親を呼びつけては好き勝手なことをズケズケ言っていた。両親を離れの冷たい床に正座させ、まるで鋭利な刃物のような言葉を両親に浴びせる。
小さくて、弱くて、なんの力もないチビだった俺は、両親が当主の言葉を堪え忍ぶ姿を物陰から見ていることしかできなかった。
本家に行くのは子供の頃から大嫌いだった。つまらなくて退屈で、自分がこの世に存在してない者のように扱われるからだ。
親戚の子供たちは本家の人間たちから贈り物や、お年玉をもらえていたけど、俺は祖父母や父方の親戚にしかもらったことがない。
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