第1話 HIT IN THE CASTLE

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 その日の朝。ショーヤはドレッサーの前で、口紅を塗る。それによって、彼女の厚みのある唇は赤く染まった。  腰元まで伸ばした黒い髪をカールさせてから、後頭部にフリルのリボンをつける。  この国で、ショーヤは一妻多夫制が唯一認められた存在だ。ひとりの男だけを愛すなんて、馬鹿馬鹿しいと思っていた。男は自分のために生き、自分は男にこきを使ってこそなのだと。  よって、一夫多妻制や、女性が男性に尽くすという考えには否定的だった。本来、男という存在は、ひとりの女性をめぐって争うべきなのだ。美しき生命であるこの私を。ショーヤは自分に自信を持とうと、いつしか本気でそう思うようになった。
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