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その夜、政宗は紫織の布団に潜り込んで寝ていた。潜り込むと言っても、大型犬の彼が本気で布団の中に入ると紫織を押し出してしまう恐れがある。そのため政宗は身体の大半を布団からはみ出させていた。
「う~……マサムネくん……生クリーム……」
「クー……」
寝言に寝言で応えながら寝ていたが、何だか眩しくて政宗は眼を覚ました。
「ガウ?」
枕元で何かが緑色の涼しげな輝きを放っている。政宗はそこに自分が拾ってきた球体を置いていたのを思い出した。ジーっと見つめていると輝きがみるみる増していく。
「ヒャンッ?」
危険を感じた政宗は隣で熟睡している紫織を起こそうとした。
「ワン!」
政宗が吠えた次の瞬間、球体の輝きが一気に強まり、部屋が光りで包まれた。
「キャンッ!」
恐怖の叫びと共に、今度は一瞬にして光は消えた。
「ん……マサムネくん……」
寝ぼけ眼で紫織が自分の隣に寝ている政宗の姿を探す。だが、部屋の中に大きくて白い姿は見当たらない。
「おトイレ?」
半分寝ている頭で考えていると、部屋のドアをノックする音がした。
「紫織ちゃん、どうしたの?」
祖父の法眼だ。
「ジィジィ……」
ドアを見つめているうちに頭が冴えてきた。ドアは閉まっている、窓も開いていない、もちろん押し入れも閉まったままだ。間違いなく政宗は一緒に寝たし、彼はドアや窓を開けられても閉めることはできない。
「大丈夫?」
再び祖父の声がドアの向こうから聞こえた。
「ジィジィ、マサムネくんが消えちゃった!」
紫織の机の下で、政宗が拾ってきた球体が静かに緑色の光りを放っていた。
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