彼岸花の咲く頃

｢あの二本の彼岸花、交配したらピンク色にならないかな？｣　

明花里の唐突な疑問に、私は飲んでいた水を吹き
出してしまった。
｢うわ｣と声を上げわざとらしく身を引く隣人に、
私は｢誰のせいだと思ってるの｣と軽口を叩きつつ
ポケットから取り出したハンカチで濡れた胸元を
拭う。

｢あ、それ。まだ持ってたんだ。｣

友人が嬉しそうに指差したそれとは、今私の手に
握られているハンカチだ。ピンク色のギンガム
チェックで、四隅を白いフリルが囲っている。
初めて彼女の家を訪れた時は、驚いた。ピンク色のカーテンに、ピンク色の絨毯。本棚や学習机に至るまで、全てが甘い色合いで統一されていた
からだ。

このハンカチも愛らしいデザインで、いかにも
彼女らしいデザインチョイスだと咲希は思う。