夫の趣味は石集め

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「ごめんなぁ……俺、もっと……菜々美にいろんなことをしてあげればよかった。もっと……旅行とか、一緒にいろんな場所に出かければよかった……」  信吾さんの声が途切れ、彼は小さく震えていた。今まで感情を抑えていたのだろう。彼は私の遺影を見つめたまま、静かに泣き続けた。  私はその姿を見て、どうしようもない切なさと愛しさで胸がいっぱいになった。  信吾さん、ありがとう。私は大丈夫よ。あなたが石を集めていた理由も、夜に出かけていた理由も、全部、私を想ってのことだとわかったから。私はあなたにこんなにも愛されていたのね。最後に知ることができて幸せ。  私、あなたの愛が込められた、この夜見石の指輪と一緒に旅立つわ。だから安心して。いつまでも泣いてちゃダメよ? あなたの涙を拭ってあげたいけれど、できないから、せめて最後に抱きしめさせて。  私は、信吾さんの背中をそっと抱きしめた。彼の幸せを願いながら。
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