32人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前なあ……俺、一応バーテンダーなんだけど。てか、ラヴァもでしょ」
「そんなん良いから早く出して。すみが風邪引く」
「……あーはいはい。お前が上司をコキ使うなんて、今に始まったことじゃねーし」
ぶつぶつと呟きながら、千桐さんは温かい紅茶を淹れてくれる。
はい、と渡されたそれは白い湯気が立っていて、カップに触れるとじんわりと熱が伝わってくる。
ひとくち飲めば、冷え切った身体がじーんと温まるのを実感した。
……やさしい味。
先ほどまでの絶望感は幾分か薄れ、温かい紅茶にほっと息をついた。
「美味しい?」
となりから尋ねてきたのは、一段と優しい瞳を向けてくれているラヴァ。
明るい場所で改めて見ると、彼は本当に美しく麗しい。
こんなにも魅了される人に、わたしはいままで出会ったことがなかった。
彼の少しパーマがかかった黒髪が揺れるのを眺め、こくりとうなずく。
「すごく美味しくて……温かい」
「ん、そっか。なら良かった」
最初のコメントを投稿しよう!