赤箱の住人

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「お前なあ……俺、一応バーテンダーなんだけど。てか、ラヴァもでしょ」 「そんなん良いから早く出して。すみが風邪引く」 「……あーはいはい。お前が上司をコキ使うなんて、今に始まったことじゃねーし」 ぶつぶつと呟きながら、千桐さんは温かい紅茶を淹れてくれる。 はい、と渡されたそれは白い湯気が立っていて、カップに触れるとじんわりと熱が伝わってくる。 ひとくち飲めば、冷え切った身体がじーんと温まるのを実感した。 ……やさしい味。 先ほどまでの絶望感は幾分か薄れ、温かい紅茶にほっと息をついた。 「美味しい?」 となりから尋ねてきたのは、一段と優しい瞳を向けてくれているラヴァ。 明るい場所で改めて見ると、彼は本当に美しく麗しい。 こんなにも魅了される人に、わたしはいままで出会ったことがなかった。 彼の少しパーマがかかった黒髪が揺れるのを眺め、こくりとうなずく。 「すごく美味しくて……温かい」 「ん、そっか。なら良かった」
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