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嘘と秘密の境界線-2
レイくんみたいな、大悪魔……?
「レイくん。レイくんが悪魔って……どういうこと?」
自分でも感心するくらい冷たい声が出た。
「えっと、えっと、ね、言おうとは思ってたんやけど」
胸の前で小さく手を振りながら後ずさりをはじめたレイに、眉間を指で揉みながらセオドアが訊ねる。
「レイ。おまえ自分が悪魔だってユーゴさんに話してなかったのか?」
「う、うん」
「ここにいる全員が魔物だってことも?」
「うん…」
言われてユーゴはサッと周りを見渡した。レイが悪魔とわかった時点でそうかもしれないとは思っていたけれど、やっぱりびっくりしてしまう。
「ユーゴさんはレイのこと人間だと思ってた?」
「はい」
ふたりの返答を聞くと、セオドアはふうと深くため息をついた。
「すみません、ユーゴさん。今、訊きたいこと言いたいこと山のようにあると思うんですが、それ、一旦置いてもらって、先に仕事の話をしてもいいですか? 今回の仕事、ユーゴさんも参加と聞いていたんですが、状況が状況なので聞いた後で断ってもらっても構いません」
「わかりました」
「ありがとうございます。レイ、後でユーゴさんにちゃんと説明しろよ」
ギロっとセオドアに睨まれて、レイはコクコクと首を上下に振る。そんなふたりを見て、仲がいいんだな。と思いながらユーゴは前に向き直った。
「じゃあ、ユーゴさんへの説明も兼ねていちから確認する。まずメンバー。テオ、アラン、タフィー。この三人は獣人。耳と鼻がいいので偵察、探索、物理攻撃を担当します」
セオドアに言われ三人を見る。テオは小さく手を振り、アランは微笑んでくれた。タフィーだけはちょっと神妙な顔をしている。
「次、リアム。彼は吸血鬼です。暗示をかけるのが得意なので、記憶の消去や書き換えは彼に」
言われてリアムに目を移す。パチリと目が合うと、彼はニッと笑ってわざと牙を出してみせた。
「俺、セオドアは魔術師で人形使い。この船のクルーの八割は俺の作った人形です。人形は全部、耳に緑の小さなピアスがついています。それで見分けてください」
はい。と返事をしながら、ユーゴはセオドアを凝視した。
魔術師というのは魔物の中でもかなり珍しい。ユーゴも実際に見るのは初めてだった。
魔力が恐ろしく強く、村ひとつ分くらいの数の人間なら造作もなく操れるらしい。セオドアは人形使いと名乗ったところをみると、操れるのは人間ではなく自分で創造した人形なのだろう。
ただ、魔力が強い反面、本人自体はとても脆いと聞く。そのせいで個体数が少なく希少らしかった。
「で、レイ。コイツは今聞いた通り、悪魔です。詳しいことは本人から聞いてください。ユーゴさんも悪魔だと伺っています。間違いないですか?」
「はい。ただ、僕はあまり力が強くなくて…」
「その辺はまた後でお聞きします」
「はい」
返事をするとセオドアは頷いて正面を向いた。
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