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「ねぇ、私の家族になってくれる?」
泥だらけの犬を撫でながら風歌は訊ねる。それに答えるかのように犬は小さく鳴いた。
風歌は犬に水と犬用の缶詰めを与え、東京のマンションに帰ってからシャンプーをした。風歌のマンションは犬を飼っても問題ない。
「わぁ、すごい!初めて見たよ!」
泥を落として綺麗になった犬を見た瞬間、風歌の胸が大きく弾んだ。犬の犬種はイングリッシュ・セッターだった。日本では見かけることが少ない犬種である。
イングリッシュ・セッターはイングランド原産であり、鳥猟犬として活躍していた歴史がある。獲物を発見した際に身体を伏せてジッと待つ姿からセッターと名付けられたそうだ。
「かっこいい〜!」
風歌はセッターを撫でた。イングリッシュ・セッターの特徴であるアートのようなブチ模様が汚れが落ちたおかげではっきりと見える。ブラック・ベルトンの毛が美しい女の子だ。
「早速病院へ行かないとね。あと名前も考えなきゃ」
ドライヤーで乾かしながら風歌は言う。セッターはドライヤーの音に驚く様子は見せず、むしろ目を細めて気持ちよさそうにしていた。
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