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動物病院へ連れて行ってから数週間、風歌は犬にチョビと名付け、これからのことを考えた。そして地元に帰ることを決めたのだ。
「地元の方が自然豊かだし、チョビが伸び伸び過ごすにはいいよね」
東京のマンションでも暮らせないことはないが、風歌はすぐに地元で暮らせそうな家を探し、引っ越しの準備をする。風歌の地元は犬の飼育頭数が二番目に多いほど犬好きが多い県である。
「チョビ、ちょっと遠くなるけど地元で暮らそうか」
風歌は犬用ベッドの上で横になっているチョビの頭を撫でる。風歌の手にチョビは顔を擦り寄せ、数分後にはいびきをかき始めた。
そしてチョビが来て一ヶ月後には、風歌の姿は地元にあった。地元に帰って来て最初に向かったのは、新居ではなく実家である。
「ただいま〜!」
「おかえり。帰るなら連絡しなさいよ……ってあら、何この犬!」
玄関に顔を出した母は、風歌の傍らで尻尾を振っているチョビを見て驚いている。続いて顔を出した父も、「初めて見る犬種だ!」と驚いていた。
「この子はイングリッシュ・セッターのチョビ。私、チョビと暮らすためにここに帰って来たの。もう家も買った」
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