家族になろう

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「何なの、その根拠なさそうな言葉……」 「お前彼氏いないんだろ」 父に訊かれ、風歌は首を縦に振る。恋愛経験がないわけではないが、大学を卒業して以来恋をしている暇がなく、二十代半ばを迎えてしまった。 「家はともかく男っていう生き物はな、好きな人が自分以外を可愛がることに抵抗があるものなんだよ」 その一言が風歌は納得できず、すぐに反論する。 「それはおかしいよ。だってその理論なら、男の人は自分の子どもができたら父親になれるの?好きな人が自分以外を見るのが気に入らないってタイプなら、絶対に父親にならずに子どもに対抗するようになるんじゃない?そんな人なら、私は一生独身でいいよ」 幸いにも食べていけるだけのお金は稼いでいる。味噌汁を飲む風歌を、両親は複雑そうな顔で見ていた。 家を出た後、風歌は新居に向かって車を走らせる。新居となる家は空き家を改築したものだ。古民家だったものの、おしゃれな雰囲気になって風歌は満足している。 「チョビ、これから新しいお家だよ。改めてよろしくね」 後部座席でくつろぐチョビは、大きなあくびを一つした。
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