青年3

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青年3

 机の奥深くに仕舞い込んでいたファイル開き、一番後ろのページにしまってあった二枚の遺書をとりだした。  古い紙に綴られた、息子を思う母の言葉。そして、弟の未来を案ずる姉の言葉。  もう遠い過去の事なのに、それを見ると胸の奥が火傷したみたいに熱くて、痛かった。 「お母さん、お姉ちゃん、愛をありがとう」  僕は時を止めたまま生きるその紙切れから自分を想う確かな愛を受け取ると、再び元のファイルに戻し、それを優しく抱きしめた。
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