0人が本棚に入れています
本棚に追加
だってその男子生徒は、目がギンギンだったから。一目見て、普通じゃないって分かる表情だった。
「あ、あの……手、放して」
声が震える。恐怖で弱気になってしまう私とは裏腹に、腰に回された手はどんどん力強さを増していった。
「えっと、あのさ。あ……同じクラスの、えっと……誰だっけ。早く手、放してよ」
「覚えてないの?」
「っ……!」
耳元で、低いガラガラ声がささやいた。悪いことをしているような気持になって、
「ご、ごめんなさい……」
数秒の沈黙。音が消えた図書館は、まるで別の場所みたいだった。冷や汗が額を流れた。
「な!? あっ……!!」
宙に浮いた。というか、浮かされた。視界が本棚から天井になる。後頭部に鈍痛を感じて、反射で目を閉じた。次に目を開けると、目の前にさっきの名前を思い出せないクラスメイトの顔が迫っていた。
彼の手が、私の股間に伸びた。
「嫌……!」
身をひねったけれど、片手で肩を押さえつけられてしまって、女の力では振りほどくことはできない。
「やめて!!」
必死の懇願もむなしく、制服のスカートを脱がされた。
「嫌……! 助けて! 助けて!! 誰かぁあああ!!!!」
壁の向こう――入り口のカウンターにいる司書に気づかれるように思いっきり大声で叫んだ。どうして小中学校の図書室みたいに、うちの高校の図書館ももっと小さくしなかったんだよ馬鹿!!
「もが……もがあああ」
口にハンカチタオルをつけこまれた。私のポケットに入っていたものだ。カチャカチャと音がする。男子生徒がズボンのベルトを外そうとしている音だ。
ああ、終わった。そう思ったとき、右手が一冊の本に触れた。
最初のコメントを投稿しよう!