分岐点

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 きっとこれは、神の啓示なんだろうな。私は床に落ちている本を右手で手繰り寄せ、しっかりと掴んだ。とても分厚く重い本で、片手で持つと筋肉が悲鳴をあげて手が震える。  男子生徒はパンツを脱ぎ捨て、私にまたがった。負けるかァ!! 後頭部を殴ると、 「がッ!」  彼は怯んだ。一瞬安心して、本を落としそうになる。その刹那、 「ごぉえ!?」  腹を思い切り踏んづけられた。私はゲロを吐いて、地面でくの字になる。口に詰められていたハンカチタオルが顎から首すじに転がって、湿った冷たさを感じた。  やばい……意識が……。でも……。彼が起き上がり、再び私にまたがった。つづきをするつもりだ。やだ……、怖い……、痛い……、怖い……怖い……怖い。でも、今ここで諦めたら……!  私は殴った。何度も、その本で。必死に。そのたびに彼は、『ぐぉ!』とか『ぎゃあ!』とか悲鳴を上げて、やがて静かになった。 「た……助かった」  床に落ちているスカートとパンツを拾い上げる。吹奏楽部の奏でるラッパの音が、祝福してくれているみたいに聞こえた。  
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