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分岐点
何も悪いことをしていないのにも関わらず、突然人生が終わることがある。私にとっては、それが今日だった。
「またねー」
「じゃーね。あとでラインすっからよろ」
「あーい」
帰りのホームルームが終わり、下駄箱で友達と別れる。友達は部活のため体育館へ、私は宿題をやるために図書館へと向かった。
「うわぁ……全然人いないじゃん」
宿題が出たその日にやる人って、私以外いないんだなぁ。私って案外真面目ちゃん? なんて思いながら、静まり返った図書室を学園サンダルの音をぺたぺたさせながら歩く。
「えっと……民俗学、民俗学はっと……あっちの棚かぁ」
ちぇ。めんどくさい。なんだってインターネットやらチャットGPTやらの便利な文明の利器がある時代に、わざわざ図書館で調べ物をしなきゃなんないのさ。
『お前たちは便利な時代に生まれたから、それに胡坐をかいている。俺がお前くらいの年齢のときはインターネットなんてなかったから、図書館で必死に勉強したものだ。自分で苦労した知識しか身につかない、だから俺の宿題はインターネットを使わずに必ず本で調べ物をすること!』
だってさ。げぇっ、現国のキモ島きっしょー! そんなんだからモテねーし一生独身なんだよ。氷河期ジジイってホント、自分がされて嫌だったことを人にするのが好きだよねぇー!
「っと、あった」
目的の本を見つけ、背伸びして掴んだ。
「あ、やば」
その本は意外と重くて、危うくバランスを崩しそうになる。うしろによろけた私の腰を誰かが掴んでくれて、転ばずにすんだ。
「あ、ありがとうございます」
振り返った私は、息を飲んだ。だって、
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