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陶野くんの豹変
そして次の日、授業中。はっきり言って、手につかぬ。
原因はもちろん例の生徒、『陶野伊澄』である。
(キンコンカンコーン)
おっしゃ終わったぁ!
「あ、小テスト来週はお休みでーす。」
生徒たちは例によってガヤガヤで連絡をかき消しつつ、続々と教室を出ていった。…こう見えて容赦なく落とすかんな、私。ふぅーと息をついて視線を移動させた次の瞬間、私の心臓はマジで一瞬止まる。目の前に立っていたのは…
と、と、とととと陶野伊澄ーッ。
「とっとととと…陶野君。」
心のどこかで来そうな気はしていたが、実際来られるとオギャーと泣き喚きそうになった。その日の陶野伊澄は、グレーのパーカーに細身の黒スキニー、黒のリュックというシンプルな格好だった。ほかの男子と何ら変わらない服装だというのに、どこか一線を画している。そう感じるのは、スタイルが良いからなのか、それとも『本性』を知ってしまったからなのか…
見た目が良いのでうっかり眺め回してしまったが、とにかくもうコイツと関わる気は毛頭ない。関わったとて、私より頭がよろしい彼の事。写真で体よく脅されて、泣きを見るのが関の山。私は先手を打って退散することにした。
「あ、次回の小テストお休みですよ☆それじゃ。」
しかし、陶野伊澄の死んだ瞳は私を決して逃さなかった。
「先生って一人暮らしですか?」
「え?はい。」
しまったぁ!条件反射で正答しちまったぁ、くそが!!『怪訝』を一切隠さない顔の私に臆せず、陶野伊澄は至って冷静に告げた。
「今晩泊めてくれませんか?僕の部屋いま、修羅ってて。」
「しゅ、しゅらってて?」
まて、それ以前におまえ何つった?『泊めろ』おおお??宇宙人を見るような目をしてみたが、彼が臆する様子はない。
「とにかく僕今帰ったら、部屋で待ち伏せしてる複数名の女に確実に殺されるんですよ。」
…先週の悪行を見るにつけ(実際は『聞いた』だけだがまあ同じことだ)、コイツに関して女性絡みのトラブルが、それはもうぐっちゃぐちゃに絡まりあってることは想像に難くない。なんとなく心中はお察しできるが。
「だから講師に泊めてって…無理に決まってるでしょ。」
おぉしマキ!よく言ったぁ!恐怖で足は震えてるけど、たぶん見えてはないもんねっ!しかし、陶野伊澄はにっこり笑って自分のスマホを軽く振る。途端、形勢は逆転した。
「そ、それはっ!」
思わず大きな声が出て、若干残っていた学生達が訝しげに我々を見遣る。私はぐぬ…とうつむくしかない。彼のスマホの中には、私とシズクが路上でディープキスしているように見えなくもない写真がしっかり収められているのだった。完全勝利を収めた陶野伊澄は、私の耳元でささやいた。
「いいじゃないですか…先生と僕、『同類』でしょう?」
・・・
というわけで、教え子を部屋に泊めることになってしまいました!わーどーしよ!ってかこれ、逆に墓穴掘ってない!??いや…まだ『泊める』と決めたわけじゃない。私は、日付が変わる前にどうにか和平交渉し、スマホの画像を消させることに一縷の望みをかけていた。
とりあえず、仲良く並んでご帰宅するわけにはいかないが…と思っていたところ、伊澄は『人目につかないように付いていきます』と、冷静に手を打ってきた。妙に修羅場慣れしている。
とりあえず先に部屋に帰ると、ガッデム。まだシズクは帰っていなかった。事態の説明しなきゃもだし、何よりあの得体の知れない生徒と二人きりにはなりたくないな…あ、そうだ確かスマホを渡していたんだった。フードデリバリーにスマホは必需品なのだ。どうにかしてなるはや帰宅してもらわねば。私はささっとスマホを取り出した。
「あっシズク!ちょっと喫緊案件なんだけど…」
「えっ?すいません!今ちょっと自転車で…」
シズクは絶賛配達中らしく、ぼわわわわという風の音とシャーッという走行音が音声の9割を占めている。
「一瞬停まって聞いてもらえると、ものすご~くありがたいんだけどっ!」
「え?うお、っぶね…あ、はい!何っすかぁ~?」
シズクの声はけろっとしているが、マイク越しのゴツンという鈍い音は恐らく自転車が縁石にぶつかったのだろう。私は唇を噛んで『あ、あとでかけ直すねぇ~』と電話を切った。
はああああ。もうすぐヤツが…この部屋に…。キッチンカウンターに手をつき真っ白な灰になっていると、ほどなくしてインターホンが鳴った。
「は、は~い…」
〇マトかな?サ〇ワかな?郵政株式会社かな?
「陶野です。」
とは思ったよね、はい。
シズクがいつ帰ってくるか読めないが、少なくとも数十分はかかるだろう。
「はああ…どうぞ。」
部屋に上がった陶野伊澄は、予想に反して大人しかった。
「いらっしゃいませ~…。」
最高潮迷惑フェイスで出迎えた私に『突然申し訳ありませ~ん』とか『わあきれいなお部屋~』とか社交辞令を言うでもなく、あるいは『茶くらい出せや』と凄むでもなく、ただ「失礼します」と部屋の隅にリュックを置いた。
…この様子なら、写真削除を和平的に持ち掛けることも可能かもしれない…そうと決まれば、行動開始。あくまでさりげない会話から入ってみよう。さりげなーくリビングのテレビをつけつつ話しかける。
「陶野君、夜ご飯はどうするつもりなんですか?」
「あ、僕あと10分くらいしたらバイト行くんで、そこで食べてきます。11時頃に戻るつもりなんですが…その時、床だけ貸してもらえますか?」
え…『泊めてもらう』の概念が、『床を借りる』かよ。齟齬ありすぎて、私引いちゃう…。まあでも気を使わないでってことなのか…?
「あ、そう…。」
船頭伊澄は「しゃす」と軽く礼をした。あ、そう…あと10分でバイトに行って、そこから11時まで帰ってこないと。なーんだ、意外と不在じゃん…ホッとしかけて我に返る。いや、何泊める前提で安心してんだ!!
あんたの目的は、コイツを泊めてやることではない!
『和平交渉成立』からの『日付が変わる前にお見送り』だあ!!
「待って、その前にちょっと話し合いたいことがあるんですが。」
しかし陶野伊澄は、私の意図などとっくにお見通しのようだった。
「…往生際が悪いですよ。それと、敬語も使わなくて大丈夫です。」
いや、だから目が怖ぇって!ひぃんと泣きそうになったが、ここは私の領域だ。少しくらい強気に出ても大丈夫だぞ、前田マキ!!
「…こういうのってお互いにとって良くないっていうかぁ…。」
陶野伊澄…ああ、もうめんどくさいから伊澄でいいや。伊澄はじっと私を見つめていたが、ふいにあっさり言い放つ。
「分かりました。じゃ今日泊めてくれたらあの写真は目の前で消します。先生の部屋に泊まったことは絶対誰にも漏らしません。」
「ホントに!?」
「本当ですよ…。」
『誰が泊めてやるかさっさと今すぐ消せ』と詰め寄りたいところでもあるが、正直この子は得体が知れない。
色々危険な感じが半端じゃないので、ある程度交渉に応じておいたほうが、後々面倒にならないかも…それに最悪、私には最強の用心棒がついている。万一伊澄が彼のことを知っていても、『血のつながらない弟』とでも言っておけば、逆に安全かもしれないし。
「わ、分かった。そのかわり、何かあったら…ただじゃ済まないからね。」
チョッピリ声が震えたが、これはこけおどしでも何でもない。見る限りシズクの戦闘力は伊澄のそれを凌駕しているし、シズクと私の信頼関係は最強だからだ。本心からの忠告だったが、伊澄はふっと吹き出した。
「意外とおっかない事言うんですね。」
貴ッ様アーーー!!!!
・・・
程無くして伊澄はバイトに去っていき、入れ替わるようにシズクが帰宅した。何も知らずに電話、何でしたかぁ?とヘラヘラしているシズクに何の罪もない。私は「実は…」と深刻に事態を告げた。
「ま、じすか、そいつ…。」
案の定シズクはドン引きだ。
「ま、じだよ、そいつ…。」
私は頭を抱えた。
「ていうか、俺のせいでこんなことに…「あー!そういうんじゃないから!!それは言いっこなしだから!」
シズクはわかりましたとつぶやき、とりあえず、呼んでくれたら人型になってマキさんを命がけで守ればいいんですね、と作戦を確認する。
「うん、それでいこう。ごめんね、こんなボディーガードまがいの事を…。」
「気にしないでいいっすよ。ていうか、イヌとかも普通にやってるじゃないすかこういうの!俺ちょっと憧れてたんっすよねー。」
シズクは無邪気に手で耳をつくり、ワンワン!と頭の上で動かした。ひとなつっこいゴールデンレトリーバーか。謎が謎呼ぶカオスの様相を呈してきたが、とりあえず、これでどうにかなりそうだ。
・・・
只今、午後11時半。
11時頃帰ると言った伊澄はまだ帰ってこない。シズクも、人型で落ち着かなげにリビングをうろうろしている。よし!いっそもう締め出すか…と玄関ロックに手をかけた瞬間、インターホンが鳴り響く。
シズクはうんとうなずき水槽に戻る。
「すみません、遅くなりました。」
中へ入るなり、伊澄は礼儀正しく謝った。
「あ、う、うん。」
行動の割に態度が良すぎて、調子狂うんだよな…。本当に『床を借りる』だけのつもりらしい伊澄は、部屋の隅っこにちょこんと座り、スマホを眺め始めた。おそらくこのまま、眠くなったらスマホを消して眠るつもりなのだろう…最近の子はみんなこうなのか?マイルールさえありゃ無問題というか、なんというか…。
スマホを見ている伊澄を横目でちらりと見る。
…たしか特待生だったが、孤児だったような…。苦学生なんだろうか?バイトの合間に勉強も、といったところか。こうして見ると、なかなか殊勝な若人じゃないか…最悪の素行は置いといて。なんとなく、シャワーくらい貸してやってもいいんじゃない?と魔が差した。
「あー、あのさ。」
「はい?」
「良かったらその…シャワー、使う?」
「…ああ。」
伊澄は一瞬何を言われたか分からないようだったが、ちょっと驚いた顔になる。
「いいんですか?」
「いいよ、別に。」
「あ…ありがとうございます。んじゃちょっとコンビニで…タオルとか、買ってきます。」
「お、おう。」
「おう、て。」
「あはは。」
「はは…行ってきます。」
「お気を付けて~。」
…バタン。…って何このナチュラルほんわかなやり取りワァ!勘違いするなよ!アンタに心許したわけじゃないかんなああ!!
伊澄が部屋から出ると同時に、ザバアとシズクが現れる(もちろん全裸で)。シズクは難しい顔で、伊澄が出て行ったばかりのドアを睨みつける。
「マキさん…あいつ見たとこ普通っすけど、やってることは相当ヤバいすね。」
「う、うん。」
何の疑いもなく全裸な君も実は結構ヤバいんだよ、とこの状況で言う勇気は無い。
「…俺やっぱ、人型で待機しましょうか?なんつーかその、抑止力っつーか。」
「うーん…。いや、やっぱ最後の切り札でよろしく頼む。」
分かりました、とどこか誇らしげにシズクはうなずき、水槽に戻る。頼られるのは、まんざらでもないらしい。ほどなくして伊澄が帰ってきた。シズクと目配せし、我々はふたたび解散する。
・・・
「シャワー、ありがとうございました。」
「あ、いえいえ…。」
ふわあ、と欠伸がでかけて時計を見れば、すでに12時を回っていた。普段なら確実に熟睡している時間だ。…しかし、伊澄より先に寝付く気にはなれない。お互いスマホをみつめつつ、時間ばかりが経過する。しばらくすると、ふいに伊澄が声を上げた。
「…寝なくて良いんですか?」
「…え。」
そりゃー、寝たいけど。私の想いが顔に出たのか、伊澄は『というか、そりゃそうですよね』と苦笑した。
「先寝るのもなぁと思って、変に様子伺ってました…逆に迷惑でしたよね、すみません。」
なんとなく沈黙が続いた。気まずさに耐えかねた私は、なぜか『紅茶飲む?』と口走っていた。
「…ありがとうございます。」
伊澄が普通の大学生のように笑うのを、そのとき初めて見た。
二人で紅茶を囲んでいると、伊澄はぽつりと呟いた。
「ちょっとだけ、悩みとか聞いてもらって良いですか?」
「えっ…。あ、ああ…ちょっとなら。」
「ありがとうございます。」
伊澄は少し顔を赤くし、微笑んだ。紅茶をブランデーか何かと勘違いしているのかもしれない。しかし、彼はもうすでに語り始めてしまっていた…
「僕、思春期の頃から、欲求不満になると人格替わるようになっちゃったんですよね。そのせいで、女性関係のゴタゴタがずっと絶えないっていうか…」
「それは中々、大変だぁ…」
ほうほう。つまり先日のあれも欲求不満によるものだったということか。思春期の頃からって…中々だな~。家族のこととか学校のことで、色々あったのかも。優秀な生徒みたいだけど、強い光の側にはそれだけ強い影もあるってことなんだろうな~~。同時に、喫緊の疑問も脳裏に浮かぶ。
え、それ今言う?今から各々、平和的に眠りに入ろうとしてる状況で??
しかし突っ込む間もなく、彼は座ったまま眠りに落ちていた。私はそっとブランケットをかける。
人格が替わるって…一体どうなってしまうのか…。
まあ、それもあと数時間ですっぱり関係なくなる話だが。私はベッドに入ると、いつしか深い眠りに落ちていた。
・・・
(ズシッ…)
身体のうえに走った不穏な衝撃。同時にベッドが大きくたわむ。頭上で響く、『誰か』の荒い呼吸…布団越しにぴったり密着する『誰か』の身体。
伊澄!!案の定…っ!
案の定、布団の上から馬乗りになっている伊澄の目は、暗がりでもわかるくらいに危険な光を放っていた。
これは…やばい!!!!「シズ…」
シズクを呼ぼうとした瞬間に手で口を塞がれ、呼吸すらもままならなくなる。物凄い力…息…できないっ!伊澄は片手で私の口を押さえたまま、ぐっと身体を寄せてきた。
「…興奮するッ!!」
噛み付くように囁かれ、恐怖で失神しかける。必死で意識を保とうとする私は、『人格が替わる』という言葉の意味を心底理解せざるを得なかった。
…頬を染めて紅茶を味わっていた青年とは、到底思えなかった。私が声も出せない状況にあることを悟った伊澄は、ようやく口から手を離す。
「…ゲホッ!ゲホゲホッ!!」
突然気道が回復し、私は激しく咳き込んだ。構わず伊澄は馬乗りのままシャツを脱ぎ棄て、その手はそのまま、彼のベルトに移行する。
あ、これ完全にアカンやつや。…理性が恐怖を飛び越えた瞬間だった。
「シズクーッ!!」
同時にずぶ濡れのシズクがバシャアと立ち現れ、恐ろしい目つきで伊澄の背後からヘッドロックをかける。
「この…このやろっ!!」
「ガッ…!」
「えっ、ちょ…あれ?」
アカンその2、シズクの理性も、相当トんでる!数秒でノックアウトされた伊澄が私の上に倒れ伏したと同時に、シズクは私に詰め寄った。
「何っですぐ俺を呼ばないんすか!」
「だって、口塞がれてたんだもんよぉ…」
「…もうちょいシメとくか。」
「もうやめたげてっ!」
そんな会話を繰り広げていると、伊澄がふいに意識を取り戻した。
「あれ、ここは…?」
ぼんやりした目でシズクを見ると、だれ?と言った。
「…まずお前から名乗れや。」
「はーい、一旦そこまでぇ!!」
・・・
完全に正気に戻った伊澄は、申し訳無さそうに正座している。
「…すみませんでした。」
「ううーん…ま、こうならないでもないと思ってはいた。まあ、一応は結果オーライ…なのか?だから。気にしないで。」
伊澄は黙って頷いた。本当に、さっきの獣とは別人だ。
「ところでこの人…どっから入ってきたんですか?」
来た!!!!私とシズクはそっと顔を見合わせた。こんな事もあろうかと、伊澄の居ぬ間に打ち合わせは済ませてあったのだ!!
「あっ、彼私の『血のつながらない弟』なの~。」
「ゴルァ!俺はマキさんの弟だオラァ」
打ち合わせより若干シズクがオラついているが、もうこうなったら行くしかない。ショー・マスト・ゴー・オン。
「彼、忍者が夢なんだ。だからたま~に部屋に侵入してくるんだ!アツいよね!激アツだよね!」
「ゴルァ!夢に向かって突き進んでんだオラァッ」
シズクのオラつきMAXと同時に、いやーん素敵と胸板にしなだれかかる。…完璧だ。一転して伊澄は、能面ばりの真顔になった。
「あ、漫才とか大丈夫なんで。っていうかこの前キスしてましたよね。同棲ですか?」
「っのやろ」
シズクは伊澄に掴みかかる。
「どうどう!…ここは『お姉ちゃん』に任せて。」
「え?あ…分かりました。マ…『お姉さん』」
私はコホンと咳払いし、静かにテーブルの上で手を組んだ。
「そう。あの時私、体調悪くて帰宅途中で…授業サボってバイトしてた君は知らなかったんだろうけど。そのとき偶然『弟』に出会ってね、一家相伝の治癒術を受けてたんだよ~~まあその、忍法的なやつ。でまあ、たまたまそれが口移しの形を取っていたってだけで。」
極めつけに、朝ドラ女優ばりの演技力で『信じてくれるよね』と付け加えたが、なぜか伊澄の顔はさらに感情を失っていた。
「…」「…」「…」
たっぷり1分は間を持たせた後、ようやく伊澄は切り返す。
「…なんすか?その設定。」
「クソッ!なんで信じねぇんだよっ」
シズクはバァンとテーブルを叩いた。
「とにかく、あなた方が真実を話す気がないのはよく分かりました。」
「いや、そんなつもりは…」
しかし、伊澄の心のシャッターは完全に閉ざされたようだった。
「話したくないなら、別にいいですよ。てか、別に関係ないし。」
…空気が重い。
「と、とりあえず遅いから、もう寝ようか…」
しかし、伊澄は私の提案を遮り立ち上がる。
「帰ります。これ以上迷惑かけるわけにいかないんで。」
今から一人修羅ってる部屋に帰るというのか…?確かに伊澄の豹変は怖い。でも、不幸中の幸いでシズクも人型で見張ってくれるはずだ。それに、伊澄の事情も少しは理解できる気がするし。
「いや!今日はここで休んでいきなさい。まあ『何か』あったらまた痛い事になるとは思うけど…。」
伊澄は少し躊躇したが、小さな声で『じゃあ、お言葉に甘えて』とつぶやき、我々はふたたび各々眠りにつくことにした。
「俺はここで寝ます!!」
「いや、だから重いんだわ!!」
「マキさん襲わせるわけにはいかないんで!!」
ようやく私が眠りについたのは、強情にベッドの上に鎮座するシズクとの問答を経てからだったが…。
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