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私は一人がけのソファに腰をおろす。
遥時さんの顔色は真っ青だった。
百八十センチの長身を背もたれに預けて、辛そうに息を吐く。
「どうしたの? もしかして、体調を崩して早く戻ったの?」
いや、と彼は手を横に振った。
「どこも悪くないよ。ただちょっと寝不足で、貧血みたに頭がふらつくだけ。昨夜よく眠れなかったから。食欲もなくて……」
「お仕事、そんなに大変だったの?」
千葉の海沿いに新しくホテルを建てる計画があり、現地へ視察に行くと話していた。
「いや、仕事はなにも問題なかったよ。ただ疲れがたまってたのかも」
私は彼の後ろに立っている女を見た。
この幽霊、おそらく出張先から連れてきてしまったのだろう。
遥時さんの不調もこの幽霊のせいに違いない。
「玉子、卵がゆを作ってきてちょうだい。あとお水も」
「かしこまりました」
玉子が部屋から出て行くと、私は遥時さんの隣に移動した。彼の手を取る。死人のように冷たい。
目が合うと、彼は囁くように訊ねた。
「僕になにか憑いてる?」
私は幼い頃から幽霊が見える。
幼なじみで許嫁である遥時さんも、そのことは承知していた。
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