ときめいて、ハニー

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甘くて苦いお酒で口を満たすと、甘ったるい話が口蓋をすべる。 「仕事の時は仕事に集中したいんだって。だから連絡取りたくないんだって。分かるの。その通りだと思うの。電話も期待してなくて、嘘、本当はほんのちょっとだけ、1ミリくらい期待したけど……あっさり着信拒否されて」 久住さんのお仕事姿を残念ながら見たことがないけれど、絶対に素敵だと思う。 ぽう、と頬を上気させていれば、宝良ちゃんは呆れる。 「は?着拒?故意って悪意じゃん」 「ううん、いつもの事だから平気。でも、一昨日の私は引けなくて“雨大丈夫ですか”ってLINEいれたんだけどやっぱり無視で、次の日になってやっと“明後日会える”だけ返事を貰いました。もちろん会いたいですって言ったけど、以降、完全に無視です。既読すら付きません。これはかなりのお怒りです。王子さまに振られる理由・天気の心配をしたから、になっちゃうのかなあ、宝良ちゃああん!」 「別いいんじゃない?それで」 「良くないよ!私は振られたくないんだよ!」 「別れて良いよ。つかあんな男、羽仁の方から振りなよ」 「無理!やだよ!こんなに好きなんだよ!?」 「分かるよ。羽仁が好きなのは超わかる。でも向こうは羽仁のことなんとも思ってないじゃん」 「そんなことないよ」 不安に蓋をする。やや強制的に。でなければ、今すぐにでも弱音が洪水のように、ドバーッと溢れて泣き散らかす恐れがあるからだ。
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