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宝良ちゃんは盛大にため息を落とすと、スマホを取りだし、電話の動作をとる。
「あ、もしもし乃詠今日来なくていいよ、いつものだから」
「ねえ!勝手にのんちゃん追い払うのやめて!?」
スマホを置いた宝良ちゃんは、ビシッと人差し指を向けて目に力を込めた。
「あのねえ、この際だから言うけど、あんた、大学の三年間、あんな男に棒に振ってるんだよ?三年よ、三年!来年は就活、就活が終わったら社会人。自由に遊べる時間なんてあと一年しか残ってないのよ!?それなのに、残りの一年もこのままでいいの?」
「最高じゃん」
久住さんと一緒に過ごせる時間 is プライスレスだ。
「あのクソ男よりはるかに良い男に告られても、( 私を大事にしてくれないクソ )彼氏がいるから、ごめんなさい〜♡って断るの?……え、羽仁馬鹿なの?」
「ちがうもーん。久住さんもいいおとこだもーん」
「じゃあ言わせてもらうけど。さっき言ってた“明後日”って、今日のことでしょ?会う予定があったならなんでここに居るのよ。どこが相手されてるのよ、完全に遊ばれてるだけじゃん」
宝良ちゃんの言葉は、新しく出来た傷に効果抜群だ。絆創膏を無理やり剥がし、抉る。だから黙った。こういう時は黙るほうがいい。
「ほらね。何も言えないでしょ。いい加減、別れるか振るか自然消滅するかしなさいよ」
「別れる以外の選択肢をください!
「羽仁の友達として言ってるの。どうも思ってないなら高圧洗浄機であんたの彼氏の性格洗い流してやりたいくらいよ」
「宝良ちゃん……」
私は宝良ちゃんのことが大好きだ。それから、久住さんのことも大好きだ。でも、宝良ちゃんは久住さんのことが大嫌いだ。
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