557人が本棚に入れています
本棚に追加
以前宝良ちゃんに、久住さんのビジュ優勝写真(隠し撮り)を見せたら“かっこいいけど、女殴ってそう”とだけ言った。一度も殴られたことは無いので、これは完全に冤罪だ。
大嫌いと大好きのマリアージュは不可能だ。大好きになってもらうことも、どうやら見込めない。
だからお互いのためにも、動線は見極めた方がいい。ここを超えると危ないですよ、をきちんと分かっている。何故なら宝良ちゃんとは、7年の付き合いになるからだ。
だからのんちゃんを待っていたのに、乃詠と二人で飲むけど羽仁も来る?と誘われて即頷いたのだけど、待つ時間さえ不安で押しつぶされそうな気持ちを抑えられず、私は動線をえいやと超えてしまった。不徳の致すところだ。
「やっほ〜おまたせ〜」
待ち望んでいた女神が到着する。私のテンションも上がる。
「乃詠ー、遅かったね」
「今日のおじなかなか帰してくれなくて超困ったよ〜、時間ギリギリまでホテル居た〜」
「またかよ。稼いだ金ホストに注ぎ込むのも程々にしなよ」
「ふふ、分かってるよー。それで、私の愛しの羽仁ぃはどうしたのかな〜」
「のんちゃん!聞いて!」
「はい最低〜」
「まだ何も言ってないよ!」
のんちゃん、宝良ちゃん、それから私、いつものメンバーで過ごす華の金曜日は楽しくなるはずなのに、私は表向きにしたスマホばかり気にしている。
分かってる。分からない。分かりたくない。
三つがぐるぐると、永遠に捕まらない追いかけっこをしている。
最初のコメントを投稿しよう!