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その声に私の五感はとても正直だった。
「……え、久住さん?」
だってそれは……スーツ姿の久住さんだったのだ。
好きな人に会えないはずの夜が、たちまち会える夜に変化した。私にとって、これ以上の幸せはない。
久住さんは私の隣に腰を下ろすと、ネクタイを緩めた。
「お前な。ちゃんとスマホ見なよ」
「スマホ!?」
「……まあいいけど……」
遅れてスマホを取り出すと、着信が残されていた。久住さんからのものだった。私とあろうものが、何たる失態。少し前に時間を巻き戻して、文字通り肌身離さずスマホを持っていなさいと言いつけたい。
……それに!
「ひ、響くん!」
「女のところに行くって言ったろ?」
そうだけど……そうだけどさ!!
納得できずにいると、久住さんに首根っこを掴まれてしまい、身体は後退してしまう。
「響に近寄るな」
「あ……ごめんなさい!」
どうやら響くんの邪魔らしい。反省である。
「悠來先輩、飲みますか?」
「ううん、飲まない。つか、たこ焼き作りすぎじゃね」
「これ、弾の残骸」
「弾……こんな姿になって……」
「遺骨は拾ってやろうぜ」
それから、久住さんは響くんと楽しそうにしていた。私はもうご馳走様である。確かに、さっきまで食欲はそこにあったのに、久住さんと一緒にいると胸がいっぱいになって、食欲が減少してしまうのだ。
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