560人が本棚に入れています
本棚に追加
「(でも、そういえば、久住さんをこれ以上" 甘やかすな "って響くんは言ってたっけ……)」
でも、甘やかすなって、具体的にどうすればいいのだろう。
過去の恋愛は甘やかされることが多かった。だから。いざ、逆のことをしなさいと言われると難易度が跳ね上がる。
「(ということは、逆に私が甘えればいい……??)」
繰り返される、疑問、納得、疑問。
「久住さん」
「……なに」
そしてたまに、試み。
立ち止まると、久住さんもまた立ち止まってくれる。見あげると、すっと横に流れた瞳と出会う。
「私、今日沢山歩いたんですよね。響くんの家に来る前は、お友達とカラオケで歌ってて、午前中は講義で大学の中を移動して、もう、くたくたなんですよね」
「へえ、おつかれ」
「久住さん、力持ちですよね?」
「普通じゃないの」
「あーあ、優しい誰かが、おんぶして下さると嬉しいなあ~」
「歩かないなら置いてくけど」
久住さんはそう言って、振り向きもせずに歩いた。
「(だめか)」
甘える作戦は失敗に終わった。
「…………羽仁」
──と、思っていれば。
最初のコメントを投稿しよう!