ときめいて、ハニー

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「……え、」 私の疑問の到着よりも、背後から物理的に抱き寄せられる方が早かった。お陰で、完全に消える前に別の疑問が積み重なる。 雲を掴むような、柔らかく透明感のあるホワイトムスク。だって、この香りだって、もちろん知っている。 「く、久住さん……?」 意味の無い問いかけをする。久住さん以外に有り得ない。なぜなら家の合鍵を持っているのは久住さんだけだ。 ぎこちなく振り向いた。重たい前髪からちらりと覗く平行二重の目と出会う。キュン死にしかけるので困る。 寝起きだろうが仕事終わりだろうが、やる気があろうがなかろうか、久住さんのビジュアルは常に完璧だ。 「ただいまは?」 低くて色っぽい声に、誘われる。これは必然。 「た、ただいま、帰りました」 「おかえり」 さらに、耳たぶにキスまで頂いた。キスというより甘噛みに等しい。おかしい。久住さんが甘い。今までに、こんなことがあっただろうか。あるならば今日が初めてで、終わりの日だろうか。 おかしいのは認める。認めた上で、こうなってしまえば甘える。体に回された久住さんの腕を掴んだ。幸福で空っぽな体が充満されていくのを感じた。
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