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「わ、わたしは、逆というか。日本数学オリンピックに出るなんて、周りに近寄りがたいって思われて。余計に友達減っちゃって。」
「……そうなん?」
「それで、4年目はもう出るのやめたんです。」
「………そうだったんかあ。」
「だから、私にとって憂先輩は、あこがれでしかなくてですね。5年も参加して賞取るなんて、本当にすごいです!」
あまりにも憂先輩の温度がすぐ傍にあるから。顔も見れず、俯いたまま伝えた。真実はあたかも一つだけのありったけの想い。
薄っぺらく聞こえちゃったかな。
ちゃんと人の目は見た方がいい。そう思って、横目でちらりと隣を見た。
「勝手に同類や思うて、あかんな俺。刈谷さんも銅賞で終わってしもうて、俺とおんなじ気持ちで片付けようとしとってん。ごめんなあ。」
「……いえいえ、そんな。むしろ同類に思ってもらえたなんて!光栄ですっ」
「ほんま?」
「ほんま、です。」
「なら同類項ってことで、これからも仲良うしいひん?」
「へっ?」
「嫌?」
「いえっ、まさか!」
「ちゃっかり後輩のID奪う“憂先輩”でも、ええ?」
「は、はい」
先輩が自分のスマホをタップして、QRコードの画面を見せてきた。
私も鞄からスマホを取り出して、先輩のスマホに映し出されたIDのQRコードを読み取ろうとする。
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