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でもね、緊張して手が震えちゃって。
なかなか読み取れないから、見かねた先輩が私の手首をつかんで上手く読み取れるように誘導してくれたんだ。
「“憂先輩”言われんの、ちょっと気に入っとったりする。」
そう言ってふんわり笑うから、私は登録した“すぐりつ”と書かれたIDにメッセージを入れた。
《憂先輩、おしるこありがとうございました。憂先輩、よろしくお願いします🙏》
先輩の「ふふっ」とした声が漏れて、私も即レスメッセージを受信する。
〈爽ちゃん、おしるこぜんぜん飲んどらん〉
“爽ちゃん”
おしるこ未開封の事実よりも、“ちゃん呼び”に顔が熱くなる。
ホームに来そうな電車の風が吹いても頬は冷めず。おしるこの方が冷めちゃってるよ。
そんな刈谷にはどこ吹く風の先輩から、またすぐにメッセージを受け取った。
〈来月の出張の時、ご飯さそっても大丈夫?〉
先輩と?二人で?
スマホを見つめる私に、先輩がお隣から「んー?」と覗いてきて。郵便屋さんに手紙をお願いしに行く猶予も与えられず。
コクコクと首を縦に振る。
《憂先輩いいですよ。って言ってほしかってん》
〈すぐるせんぱいいですよ〉
《惜しいなあ。い、が足らん》
〈憂先輩、いいですよ。〉
《そうちゃんありがありがとう》
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