ねえ先輩。爽ちゃん呼び、恥ずくないですか?

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私は聞こえていないふりをし、社内システムの経理部共用フォルダから、今期年間スケジュール表と予算案、予算表のデータを引っ張り出してくる。 画面上で3つ窓を並べて見比べて。計算器を取ろうとすれば、そこには私を覆う影があった。 「っ……び、びっくりしたー」 「…………」  私の真後ろに立ち、冷えた瞳で見下ろすのは、憂先輩。 スタイルのいい長身は、普段から体型管理を怠らない証拠なのだろうか。油物は食べないと噂で聞いたことがある。 ネイビーのスーツに縞々のネクタイは、平穏無事なオーソドックスを極めている。 無表情で、奥二重に長い睫毛から覗くグレーの瞳。憂いを帯びる、美しくも儚い顔立ち。 眼科で眼球ごと見られているかのように、私をまるごと見下す憂先輩。全身にひやりとしたものを感じ取る。  今まで離れた支部だったため、今度からきっとほぼ毎日のようにこの美麗を眺めることとなる。 小さな震えを隠しながら、なにかしら?と見つめ返してみる。 すると先輩の長い指が、私の前にゆったりと向かってきた。
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