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馬車に乗って、20分ほどで目的の場所に着いた。
「わぁ……!」
その場所は、街が一望出来る高台だった。
クラヴィスが私の隣に来て、「最近、この場所を見つけたんだ」と景色を眩しそうに眺めている。
景色を見ているクラヴィスの横顔を見ていると、ずっと勇気を出せずにいたことを言えるような気がした。
きっともう話しても大丈夫だと思えた。
「クラヴィス、前に何故私が悪女と呼ばれているか聞きましたわよね。今、答えてもよろしいですか?」
私の言葉にクラヴィスは私と目を合わせた。
「私は、自分でユーキス国一番の悪女になることを選んだのです」
私はゆっくりとフリクのこと、フリクからの提案に乗ったことを話していく。
クラヴィスはただ静かに私の話を聞いてくれていた。
話し終えた私は、フードを手で押さえ、さらに深く被った。
クラヴィスの顔を見ることが怖かったから。
「幻滅しましたか……?」
そう小さな声で問いかけた私にクラヴィスは優しく微笑んだ。
「マリーナは前に私に言ったよね。自分の選択を後悔していないって。なのに、幻滅されると思うの?」
「確かに私は自分の選択を後悔していません。しかし、相手がどう思うかなど誰にも分からないはずです」
「幻滅なんてしない。君が自国を守るためにしたことだ。それに……きっと私だってその立場だったら、同じ選択をしただろう」
クラヴィスの言葉に私は顔を少しだけ上げた。
「ずっと怖かったのです。クラヴィスにこのことを打ち明けることが。でも、笑顔でいたいから。クラヴィスの前で偽りなく笑っていたいのです」
クラヴィスが私に一歩近づいた。
「笑顔でいるってそんなに大事?」
「え……?」
クラヴィスが私のフードに触れる。
「これから先、笑顔でいることが難しい時もあると思う。だから、無理に笑顔でいなくていいよ。だって……」
「私が笑顔にするから」
クラヴィスが私のフードをめくって、高台から景色を見えるようにする。
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