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今朝、寮の前でもクラヴィスは私のフードをめくった。
それでも、今見えている景色はあの時よりさらに輝いていて。
「フードで視界を隠していては、この美しい景色を見逃してしまうよ。それと同じように、フードで隠していては君の笑顔にも涙にも気づけない」
私は高台からの景色を見た後に、クラヴィスに視線を向ける。
そうね。
きっとクラヴィスが正しいわ。
だって、フードを被っていては、今目の前にあるクラヴィスの笑顔すら見逃してしまうかもしれない。
それは嫌だから。
そんな私がクラヴィスの瞳に映っている。
「マリーナ、実は私は……」
クラヴィスの声に私が反応すると、クラヴィス「何でもない」と首を少しだけ横に振った。
だから、私はもう一度クラヴィスに向けて微笑んだ。
「クラヴィス、私、今日がとっても楽しかったですわ。本当に」
「ああ。私も楽しかった」
きっとこの日に見た景色を私は一生忘れないだろう。
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