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「ありがとう、クロル」
私は紅茶を一口頂いて、ゆっくりとカップを戻す。
「ねぇ、クロル。私、昨日街へ出かけたことが本当に楽しかったの……自分が『大悪女』だということを忘れるくらい」
「マリーナ様……」
「分かっているわ。噂は少しずつだけれど、変わってきている。でもね、たまに思うの」
「一生、このままだったらどうしようって。『大悪女』という噂が学園の中で薄れてきている今ですら思うの。私は一生『大悪女』のままなんじゃないかって」
その時、私の手が紅茶のカップに当たった。
ガシャン、と大きな音が鳴り、紅茶のカップが割れる。
同時に私の手に痛みが走った。
割れた紅茶のカップの破片が飛び散り、咄嗟に手を伸ばした私の手の甲を軽く切ったようだった。
「マリーナ様……! 大丈夫ですか!」
「ええ、私は大丈夫……私こそごめんなさい。手元をしっかり見ていなかったわ」
クロルがすぐに私の手を取り、傷を確認している。
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