鈍色の瞳

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「高校生がそんな遅くまで出歩くものではありませんよ」 「家まで送ってくれるので心配いりません」 「あら…彼氏がいるのならこんなところにいる暇ないのでは」 「彼氏ではなくて、女の子の友達です」 「女の子の友達が夜に家まで送り届けてくれるのですか」  ほぉ、と難解な問いを提示された解答者のような表情で眉間に皺を寄せると一度ゆっくり頷いた。  さすがに嘘が詳細なものになりすぎて自分でも訳がわからなくなってきた頃、ふふ、と口に手を当てて笑うその姿はまたしても美しすぎる。 「あなたの表情はころころ変わって描きづらいですが、そのかわり飽きませんね」  透明感のある瞳を守るように光を反射させた眼鏡は、先生が映しているであろう景色をそこに描きだしていた。 「(飽きないって言われた…)」  そんなの、実質プロポーズだ。 一生そばにいられると暗に訴えているのだ。  そう捉えたい右脳と、現実をしっかり理解している左脳とでギリギリのバトルを開始すれば、勝利したのは僅差で左脳だった。  教師が生徒を、ましてや先生が私を、そんな目で見ているはずがない。そうは分かっていても喜ばしいのは先生が好意的な笑顔を浮かべてくれたから。  単純ですぐ調子にのる私は、ここでひとつの疑問をぶつけてみることにした。 「先生は、彼女いるんですか」
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