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ただでさえ独特な雰囲気をもつ美術室の、さらに奥まったところにある準備室は並んだ石膏像から視線を感じる気がしてなんだか気味が悪い。
少し埃っぽい空気にこほんと咳き込めば、使われてない机の上に見覚えのあるオイルパステルが置かれていることに気が付いた。
「(…これは)」
だいぶ前に私がなくしたパステルと同じデザインのそれは、ぽつんと居心地悪そうに埃を被ってしまっている。
「…、?」
どこか違和感を覚えるそのパステルに鼓動が早くなり、そっと手を伸ばす。学校指定のありふれたパッケージ、生徒はみな同じものを持っているはずなのに、とくんとくんと刻む心臓の音が訴えているのだ。
「(…名前…)」
ケースの裏には名前を書く欄がある。これが私のものである可能性は0.001%もないだろうが、確かめようと持ち上げた手が止まらない。
別に大したことはしていないのに、悪いことをしている気分だ。
僅かに震える手で持ったパステルは、かた、とケースの中でもの同士がぶつかる音がした。
「…──」
ゆっくり裏返すと、黒のマッキーで大きく書かれた字に見覚えがある。そして表記された名前にも。
「私のパステル……」
それは紛れもなく、私がなくしたものだった。
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