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「萌葉さ、黎のことめちゃくちゃ好きなんじゃん」
「……うん、好き」
「黎に会いたい?」
「……会いたい。っ、ぅ、黎に、会いたいっ…」
好き、大好き、会いたい。
胸の中で押さえ込んでいた言葉と共に、両目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。
「心のどこかでね、黎がうちにいるんじゃないかって……今日こそは、今日こそは、って毎日期待してたの。調子よすぎるよね。自分から黎を突き放して逃げたくせに、っ、」
「そりゃあ愛想も尽かされちゃうよね。黎の気持ちを受け流して、逃げ続けて、そのくせ自分からキスなんかしちゃって……そしてまた逃げた。ほっんと、最低だよ…うぅっ…」
ヒクヒク、と喉を鳴らしながら1人で喋り続ける姉の姿を碧葉はどんな気持ちで見ているんだろう。こんなみっともない姿を晒してしまっているけど、今の私に恥じらいなんてものはなくて。思い浮かんでくる言葉たちは留まることなくそのまま口から出ていってしまう。
「っ、うぅぅっ、……黎に嫌われちゃった、っ、」
ついに視界は溢れ出てくる涙で完全に覆われて、口からはうわーんという泣き声しか出てこない。
伊藤萌葉、今年で25歳。一心不乱に泣きじゃくる様はもはや赤ちゃんだ。
立っているのもままらなくなってきて、ずるずるとその場にしゃがみこんだ。
「なあ、」
それまで私の長台詞を聞いているだけだった碧葉がここでようやく口を開いた。
「萌葉はこう言ってるけど、嫌いになったわけ?」
「なるわけないじゃん」
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