epilogue

1/7
前へ
/168ページ
次へ

epilogue

10月30日は黎の18回目の誕生日。 これまでの黎の誕生日はおめでとうを伝えるだけだったけど、黎の彼女としてきちんとお祝いをするのは初めてのこと。少しばかり気合も入る。 運良く土曜日の今日は、サプライズで計画した温泉旅行へとやってきた。黎と泊まりがけの旅行をするのは初めてだ。 最寄駅から電車で揺られること約2時間。有名な温泉街にお昼過ぎに到着し、観光や食べ歩きをしっかり楽しんだ。夕食は和洋中のバイキングをお腹いっぱい食べ、その後はそれぞれ天然温泉を満喫した。 えんじ色の浴衣に着替えて部屋に戻ると、紺色の浴衣を着た黎は畳の上で胡座をかいていた。 湯上がりのせいか、頬やはだけた首元が少し赤く火照っている。艶っぽいその姿に思わず見惚れてしまう。 「……」 「……」 お互い見つめ合うこと数十秒。はっとしたように立ち上がった黎は私の前まで歩いてくる。 「もえ、かわいい」 「黎もかっこいいよ?なんかお互い新鮮だね」 照れ混じりにはにかむと、黎の両腕が私の背中に回った。 「風呂上がりのもえも、すっぴんのもえも、浴衣姿のもえも、全部かわいい。かわいすぎる」 「なんか恥ずかしいな」 「俺、幸せすぎて死にそう」 付き合い始めて1ヶ月。黎の口癖に「幸せすぎて死にそう」が加わった。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加