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――去年の十二月。
当時真介は冬休みを前にし、里帰りのついでに友人の弓嶋魁とその家族を誘い、実家の家族と共にスキー旅行へ行く計画を立てていた。だが、里帰りをする直前に自身と魁の父親が高熱を出してしまったことと、会社を経営する両親に急遽仕事が入り、家をしばらく空けなくてはならなくなってしまったことで、旅行の計画は頓挫してしまったのだった。
「お兄ちゃん帰ってこれないの? わたし、魁くんに会えないの? 」
電話越しで表情は見えなかったものの、妹の真理花の嘆きが伝わってきた。彼女は夏休みに親しくなった少年との再会を切に待ち望んでいた。真介は妹の望みを叶えるべく、無理を百も承知で魁に、一人で東京へ行き、真理花としばらく過ごしてくれるよう頼んだ。そして年下の友人は、笑顔でその頼みを引き受けてくれたのだった。
事態の急変を真介が知ったのは、魁が東京へ発って二日経ったころに掛かってきた電話からだった。
「真理花がいなくなった」
ろくな挨拶もなく開口一番、父は息子にそう告げた。
出張にあたって両親は真理花と息子の友人の世話をさせるべく、臨時で雇った家政婦を自宅へ派遣した。しかし自宅に着いたその家政婦が電話を寄越して言うには、家には真理花と魁の姿はおろか、人影一つないとのことであったらしい。報告を受けた両親が真理花が行きそうな場所や、彼女自身に直接電話を入れても一向に足取りを掴めなかったため、今度は彼女と共にいるであろう魁の連絡先を聞きに息子へ電話をした次第だった。
動揺する父のため、魁の連絡先を教えて電話を切ったが、真介は二人の安否を大して気にしていなかった。自身が高熱に苛まれていたせいで真理花達のことを考える余裕がなかったのと、過去にも同じようなことが何度もあれど、いつも彼女が無事に帰ってきたからだ。
しかし、それから数日が経ったころに再び掛かってきた父からの電話で、長野のとあるペンションで起こった殺人事件と、そこでの真理花の訃報を聞かされたのだった。このころには平熱に戻っていた真介はすぐに東京へ帰り、警察の検死を終えて自宅に帰されていた真理花の遺体と対面した。そして悲嘆に暮れる両親から、ペンションでの事件の内容と、妹の死の詳細を聞かされたのだった。
真理花と共にいた魁の口からも、長野のペンションで起こった事件について語ってもらおうと、入れ違いとなった彼に連絡を入れた。だが、どれだけ電話を掛けても魁が出ることはなかった。仕方なしに彼の両親に掛けたのだが、出てきた母親が言うには、帰ってきてからというもの、自分達とほとんど口も聞かず、部屋に籠もりっきりのまま出てこないのだいう。
そしてその翌日、真理花の法事の準備をしている最中に掛かってきた電話で、半狂乱状態の彼の母親から、息子が自殺を図ったと聞かされたのだった。
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