第二章 連戦連敗の日々

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「今日は資源管理がカギになるゲームだよ!」 美月がそう言って僕に手渡したのは、なんとも重厚そうな箱だった。そのタイトルは『サバイバルゲーム』と書かれている。資源を集め、それをどのように活用するかで生き残りを競う、いかにも難しそうなゲームだ。 「資源管理…また難しそうだな」 正直、前回のカード引きゲームでさえ散々だったのに、今度は資源管理が絡んでくるゲームなんて、僕にとっては絶望的に感じる。資源なんて言われても、どうやって効率よく管理するのかなんて全く分からない。 「でも、今回はじっくり考えれば勝てるよ!ほら、まずはこれを見て」 美月が渡してくれた説明書を開くと、細かい文字がびっしりと並んでいた。資源にはいくつかの種類があり、それぞれに異なる用途があるらしい。木材、食料、水、金属…それらを集め、適切なタイミングで使用することで自分の勢力を拡大していくゲームだ。 「これは絶対に無理だ」 僕は心の中で即座に結論を下した。これまでのゲームと比べても、さらに難易度が跳ね上がっているように思える。美月が何を楽しんでいるのか、ますます分からなくなってきた。 ゲームが始まり、僕は最初に渡された資源カードを手に取った。どうやら、最初のターンで手に入れた資源は「木材」と「水」だった。どちらもサバイバルに重要だが、今この場で何に使えばいいのか全く見当がつかない。 「とりあえず、使うか」 深く考えず、僕は手持ちの木材を消費して駒を一つ動かしてみた。が、それが何を意味するのかすら理解していない。ただ、何かをしなければゲームは進まないし、動かないと他のプレイヤーに取り残される。 美月や他のメンバーはすでに資源をうまく使い始め、次々と勢力を拡大しているようだったが、僕は相変わらず適当に駒を動かすだけで、まるで戦略が見えてこない。いや、戦略なんて初めから考えていないのかもしれない。 ゲーム中盤に差し掛かると、僕の手持ちの資源はほぼ尽きていた。木材を何に使ったのかすら分からず、水も無駄に使ってしまったようだ。残されたのはほんの少しの食料だけで、それすらも何に使えばいいのか分からない。 「どうしよう…」 僕は途方に暮れた。目の前で他のプレイヤーたちはどんどん資源を集め、駒を動かして勢力を広げているのに、僕だけが全く進展していない。何が重要なのか、どの資源を優先すべきなのか、全く分からなかった。 「瀬戸くん、もう少し考えてやれば勝てるかもよ!」 美月が楽しげにアドバイスをくれるが、その言葉が僕にとっては逆効果だった。考える、考えるって、どう考えればいいのか分からないのが問題なんだ。頭の中で焦りが増していく。 「いや、無理だよ…どうしてこんなに難しいんだ」 心の中でぼやくが、どうにかしてゲームを進めなければならないという焦りだけが募る。残されたわずかな食料をどう使うべきか、ただそれだけを悩んでいるうちに、他のプレイヤーたちはまた一歩先に進んでいく。 ゲーム終盤、僕はほぼ資源を使い果たし、身動きが取れなくなっていた。他のプレイヤーたちは自分の領土を広げ、資源を蓄え、次の展開を見据えて行動している。一方、僕はその様子をただ眺めるしかなかった。 「瀬戸くん、大丈夫?」 美月が心配そうに声をかけてくるが、僕にはもう何もできることがない。考えろと言われても、どう考えても状況は好転しない。焦りと苛立ちが混じり合い、ますますミスを重ねてしまった。 「もう無理だ…」 僕はとうとう投げやりな気持ちになり、最後のターンで持っていた食料を無意味に消費してしまった。その瞬間、僕の駒はゲームボード上で孤立し、誰の勢力にも組み込まれることなく、ただただ取り残される。 「やっぱり難しいね。でも、次はもっと上手くいくよ!」 美月が励ましてくれるが、その言葉がさらに僕の心を重くする。これ以上負け続けるのは、本当に嫌だ。けれど、どうしたら勝てるのか、僕にはまだ何も見えてこない。 帰り道、美月と歩きながら、僕は今日のゲームについてぼんやりと考えていた。資源管理なんて、僕には到底無理だと感じた。でも、何かが引っかかっている。負け続けるのはつらいけれど、次こそは少しでもマシな結果にしたい。 「次はもっと考えてやってみようかな」 そんな小さな決意を胸に、僕は次回のサバイバルゲームに少しだけ希望を抱き始めていた。
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