第二章 連戦連敗の日々

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「また今日もサバイバルゲームか」 部室に入るなり、僕は心の中でため息をついた。どうせ今日も負けるんだろうな。そう思ってしまう自分が情けないが、実際これまでの戦績を振り返ってみれば、勝てるはずもない。 「瀬戸くん、今日はどう?ちょっとは勝つ気ある?」 美月がにこやかに話しかけてくるが、その無邪気な笑顔を見るたびに、僕はますます自信を失っていく。なぜ彼女はこんなにも楽しそうなんだろう。僕は負け続けているのに。 「いや、どうせ勝てないだろうから、適当にやるよ」 「えー、それじゃあ面白くないよ!せっかくのゲームなんだから、もっと真剣にやってよ」 真剣にやったところで、どうせ負けるだけだ。前回もそうだったし、その前も。何度やっても結果は同じだ。僕はただ駒を動かし、資源を消費し、そして他のプレイヤーたちに圧倒されるだけ。 今日の対戦相手は、美月と他の部員の田中くん、そして新入部員の山口さんだった。田中くんはゲームに関して非常に真面目で、ルールや戦略を常に把握しているタイプ。一方で山口さんは初心者だが、ゲームに対して熱心な姿勢を見せている。 「瀬戸くん、今回の対戦相手は山口さんもいるから、チャンスだよ」 美月はそう言って僕を励ますが、僕にはその気が全く起きない。チャンスだなんて言われても、どうせまた資源管理に失敗して、早々に手詰まりになるのは目に見えている。田中くんが今回も確実に勝利するんだろう。 「ま、頑張ってみるけど」 そう言って適当にカードを引き、最初の資源を手に入れる。木材と食料。もう慣れてしまった組み合わせだが、どう使えば有効なのかは未だによく分からない。前回も同じような感じで負けた記憶がよみがえる。 ゲームが進むにつれて、田中くんは着実に資源を集め、領土を広げていく。彼はいつも冷静で、適切なタイミングで駒を動かし、資源を無駄にしない。まさに完璧なプレイヤーだ。山口さんも、初心者とはいえ意外と健闘している。 「瀬戸くん、もうちょっと考えて資源を使ったほうがいいよ」 美月が優しくアドバイスしてくれるが、正直それが逆にプレッシャーだ。考えたところで、僕には何が正解なのか分からないし、考えれば考えるほど混乱するだけだ。 「うーん、まあ適当にやるよ」 内心ではもっとやる気を出したほうがいいのかもしれないと思いつつも、僕の手は自動的に適当な駒を動かし、資源を無駄に消費していた。やっぱり今日も勝てる気がしない。 ゲーム終盤、僕はすでにほとんどの資源を使い果たしていた。木材も食料も、何に使ったのかすら記憶にない。ただ、適当に駒を動かしていただけだ。田中くんは相変わらず盤面を支配しており、山口さんもそれなりに戦っている。 「瀬戸くん、大丈夫?もうちょっと頑張ってみようよ!」 美月がいつものように元気よく励ましてくれるが、それが僕には余計なお世話に感じる。やる気が出ない理由は、ただ一つ。どうせまた負けるんだから、頑張るだけ無駄だ。 「うーん、もう無理かも」 そんな僕の弱音を聞いて、美月は一瞬困った顔をしたが、すぐにまた笑顔を取り戻した。 「次があるよ!次こそはきっと勝てるから!」 そんなことを言われても、僕はどうせまた同じ結果になるんだろうとしか思えない。美月のその明るさが、逆に僕を追い詰めているように感じる。 家に帰る途中、僕は今日のゲームのことを振り返っていた。負けることにはもう慣れてしまった。それでも、美月の笑顔と田中くんの圧倒的な強さを見せつけられるたびに、心の中で何かがモヤモヤとくすぶっている。 「なんでこんなに負け続けているんだろう」 そんな疑問が頭に浮かぶが、答えは出ない。結局、僕にはゲームに向いていないんだ。それが結論だろう。それでも、美月が次もまた誘ってくるのは分かりきっている。断る理由もないし、どうせならもう少し頑張ってみるか…。 「次こそは…少しはマシにできるかもしれない」 そう自分に言い聞かせながら、僕は歩き続けた。負け続けるのは嫌だが、それでもやめられない。何かが引っかかっているのだ。
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