いち

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運転再開を待ち侘びた人々が続々と改札口を通っていく中、私は未だに迷っていた。 どうする…、逃げる…? 私から連絡したくせに? でも所詮SNS上のやり取り。 逃げたってバレやしない。 こういう時、自分の中の良心や変な真面目さが邪魔をする。 とりあえずここにいたら邪魔になるから立ち上がって、それから…… 「ー…おねーさんがDMくれた人?」 「っ、………あ」 後ろから声が聞こえる。 それは間違いなく、私に向けてだ。 往生際悪くぐちゃぐちゃと考えていた事が、その声で全て掻き消された。 「おねーさん」 きゅ、と服の袖を掴まれて後ろに軽く引かれる。 その思ったより優しそうな声や、思わずドキリとしてしまうような仕草に顔が熱くなってくる。 恐る恐る、後ろにいるであろう彼の方へ体ごと振り返った。 「やっとこっち向いてくれた。こんばんは、おねーさん」 「こ、こんばん、は…」 俯いたまま振り返って徐々に上を見上げると、謎に包まれていた彼の姿が視界に入る。 私の頭1個分くらい高い身長に細身の体で、髪真っ黒で今どきの子らしいマッシュっぽい髪型。 顔はマスクをしているけど、それでも分かるイケメンな感じ。 本当にこの人が裏アカ男子なの? 私の完全な偏見だけど、こういう人はわざわざこんな事しないと思っていた。 おじさんみたいな人が来られても困ったけど、こんなに格好いい人が来られても困る。 「あ……あの」 「えっ、ていうかおねーさん凄い濡れてない?」 大きな瞳が目尻を下げてニコニコと笑う笑顔が眩しくて、とりあえず何か喋ろうと何とか声を出すも彼に遮られてしまった。 「え、あぁ…傘持ってきてなくて…」 そう軽く説明すると、「えぇ風邪ひいちゃうよ〜?女の子は体冷やしちゃ駄目だよ」と背負っていたリュックからタオルを引っ張り出して、それを何の迷いもなく私に渡してきた。
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