いち

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そんな世の中が常に生きづらい私でも、こうして条件のいい会社に就職出来た事が人生の中で1番嬉しく、誇らしい事であったけれど、それでも不運な私は今度は人間関係でつまづいている。 でも、こんなくだらない事で辞めたくない。 だから我慢して、我慢して我慢して…っ …なんで、私ばっかり。 「はぁ…馬鹿みたい」 もう既に誰もいない社内にぽつりと呟く。 毎日毎日朝から終電ギリギリまで働いて仕事に追われる日々。 確かに給料はそこそこいい、交通の便もいいから通いやすさもある。 ただ、充実しているかと聞かれればしていない。 賑やかな都内で、そこら中にいるようなキラキラとしたOLを望んでいたわけではないけれど、今の状態はもっと望んでいない。 せっかく上京して何もない田舎から何でもある都会に来たと言うのに、まだ何一つ楽しんだ事がない。 平日は家と会社の往復だけ。 休日は仕事で疲れすぎてとてもじゃないけど出かける気力がなく家に引きこもる生活。 だけど、そんな私にも唯一の心の拠り所がある。 それはあの会社に同じく新入社員として入り、割とすぐに付き合い始めた彼氏の存在だ。 彼は職場の異常性に耐えられず3ヶ月足らずで退職してしまったが、私たちの関係は終わる事なく今は同棲している。 次の仕事を探しながら家事をやってくれる彼には本当に感謝していて、こんな遅く帰ってきてもいつも温かいご飯を作って待っててくれるし、休日も疲れてるだろうからと私を最優先に考えてくれる優しい人。 私は今、彼がいるから頑張れていると言っても過言ではない。 上京して親はもちろん友達も、頼れる人がいない中出来た大切な存在。 私の心の支えになっている彼の事を考えると今すぐに帰りたくなってきた。 結局全て片付ける事は出来なかったが、早く彼に会いたいという気持ちが大きくなると止まらなくなって急いで会社を出た。 早く会いたい、明日は休みだ。 何かと理由をつけて出かけるのが億劫になっていたけれど、久しぶりに2人でどっかに行きたい。
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