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彼みたいに私もさっさと辞めれていれば、どんなに疲れててもどこか出かけたりもっと2人の時間を作っていれば、もう少し長くあなたといられただろうか。
最後にもう一度だけ彼を見てから歩き始めた。
2人も私に続いて歩みを進める。
ちょうどすれ違う時、私にしか聞こえないくらいの声量で彼は言った。
「ごめんな、でも俺…お前の親でも、家政婦でもないから」
その場に立ち止まって後ろを振り返ると、彼らはそのまま去って行った。
……そっか、…そうだよ、ね。
全部、私が悪い。
いつの間にかに彼の事を蔑ろにしていたんだ。
最低すぎる。
彼の言葉が頭にこびりついたまま、重い足取りで再び歩みを再開させると不意に水滴が頬を伝った。
……え、私泣いてる?
無意識に涙が出るほど悲しかったのかと自分でも驚きを隠せず、涙を引っ込めようと思わず上を向いた。
「えっ…」
上を向いた瞬間、空からぽつりぽつりと水滴が降ってくる。
涙ではなく雨だった事にようやく気づいた。
雨……天気予報だと明日のはずだったけど…
今日の朝天気予報を確認した時点ではそうだったからもちろん傘なんて持ってきていない。
次第に粒が大きくなって振る量も増えてくる。
今日は、厄日か何か?
確かに朝の占いは最下位だった。
でもちゃんとラッキーアイテム持ってるから回避出来るはずなのに、まるで出来ていない。
周りを見渡せば、突然の雨に慌てて走っていく人や、ちゃんと傘を準備していてさして帰っていく人が私を抜き去っていく。
その人たちを虚な目で眺めながら駅を目指していつものスピードで歩く。
傘を持っていない私は既に濡れているため走ったところで無駄だと思ってしまった。
そもそも走る体力なんて残っていない。
駅に着いてさえしまえば後は楽だ。
ここから最寄駅は2駅だけだし、降りた駅から家までは歩いて5分くらい。
多少濡れてもすぐ帰れるから問題ない。
それに万が一風邪引いたとしても明日明後日休みだし。
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