何色

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何色

シャラン シャラン 空から降ってくる シャランシャラン 空から落ちてくる ガーネット その覚悟は王に値する アクアマリン 妖精と人魚の秘密の楽譜 スフェーンとアンバー 魔物さえ戯れに誘う ジェイドとエメラルド 見つからない落としもの 彼らの奏でた物語 夜に降ってくる物語 集めて朝を迎えよう シャラン シャラン 夜に降ってくる物語 シャランシャラン 宝石のようなまばゆい記憶 さあ集めて 忘れてしまうその前に 何処かのお店の棚に並ぶキャンディたち。キャンディが詰まった瓶を覗けば妖精たちが笑いかけるでしょう。 彼らはあなたに尋ねます。何色にする?、と。どの色もどの味も魅力的なキャンディたち。 あなたはきっと選べない。どのキャンディを選んでも満足できない。だから、集めるのでしょう。全部の色を味わうまで、あなたはきっと満足できない。 なんて色鮮やかなこと。でもひとつ注意してもらいたい。 彼らは気紛れな妖精であるということを。 シャラン 落ちてきた不思議色の欠片たち シャラン 砕けた秘密色の欠片たち 全部全部味わいたい あなたは強欲 ひとりじめ そんなの誰もゆるさない! 一つの容れ物に全部の色を揃えたキャンディたちを入れておくとどうなるでしょうか。ええ、とても素敵ですね。カラフルで、賑やかで、楽しい気分になるでしょう。しかしそれもわずかな時間のこと。 宝石キャンディの物語は一夜にして語ることはできません。そう、彼らは同じ容れ物に入れておくことはできないのです。 六色揃ったキャンディたちは、次第に色を失っていきます。輝きはそのままに、透明な一色のキャンディとなってしまうのです。味だってただ甘いだけの砂糖飴。 彼らは自分の物語を味わってもらいたいのでしょう。他の物語と自分の物語を同じように詰め込まれたくない。これは自分だけの物語なのだ。 彼らはそう言って、雑にまとめられたキャンディから出ていってしまいます。妖精のいないキャンディはどんな味なのでしょうか。どこにでもある甘いだけの塊です。 無色透明のキャンディが語る物語。 それはキャンディに宿る妖精がいなくなるという物語。 シャラン シャラン あめが降ってきた シャラン シャラン あめが去っていった どうか探さないで 集めてはいけない 六つの物語 集めて消える 宝石キャンディ 今日は何色にする? こつんとどこかが抜けた味 無色透明 妖精キャンディ もういない 宝石キャンディ 残ってる 泣いても笑っても、もう夜明け 朝が来る前に サヨウナラ 六色キャンディ どこかへ溶けた 宝石キャンディでないはずの七色目。それは出会いと別れの涙色。 透明になった宝石キャンディには妖精がいません。だからふたたび集めるのです。 シャラン シャラン 宝石キャンディ降ってきた 六色みんな集めたら 夜明けの前に いなくなる だからずっと夜のままでいたいのです。 宝石キャンディが降り続ける特別な夜のままでいたいから。 シャラン シャラン 宝石キャンディ降ってきた
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