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キーボードを叩きながら解析して数時間。気付けば昼を過ぎと中途半端な時間。セキュリティが守ったと言っていたが微弱だが無効にされた形跡。ただ消してそうで消えてない。本物のハッカーにしては何か違う気配に和也は自身のノートパソコンとスマホ、後輩のパソコンを器用に弄る。
その後――導き出した答えは【とあるネットカフェ】。頭が良いと言えばいいのか、よく使われる手口だな、と呆れ半分。
「犯人は分からないが場所の解析はできた。見てくる」
昼ついでに行って来るか、と和也は席を立つと「すみません。ありがとうございます」と後輩が頭を下げる。「少しだけセキュリティを強化しておいた。後は此方で引き受ける。何かあったら連絡くれ」と冷めたコーヒー片手に廊下へ。
「サイバー課に侵入するとは良い度胸だが……残し過ぎなんだよな。ったく、誰だよ。荒らした馬鹿は俺が仕組んだセキュリティーが散らからなくてよかった。逆にそれが邪魔して助かった、か」
飲み干しゴミ箱へカップを捨て、時々立ちどまりスマホを弄りながら裏口から外へ。徒歩で近くの駅へ向かい、行きつけでもない初めて入る落ち着いた店内のカフェ。
昼過ぎなこともあり人は少ない。レジでブラックコーヒーとトーストを注文。少し待ち、丁寧にトレーに置かれ提供された注文品を受け取る。「どうも」と軽く礼を言い、カウンターで猛勉強している学生の隣に腰掛け、小声で独り言のように「俺から逃げられると思ったか、荒らしたのお前だろ」と脅迫しつつ静かにコーヒーを飲む。
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