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「なんだよ…さっきの…。」
駅のホームを歩きながら横をチラッと見るとエミリもじっとこっちを見てた。なんだよ、いつから見てた?
「ん?」
目が合うと急に照れたような顔で瞬きをする。
「なに?」
「ん?別に。宮野の横顔に見とれてただけ」
「バカ、やめろってそういうのマジで。」
突っ込むふりしながら実は照れてる俺。なんだよ、見とれてるってさ…。
「なに?さっきのって?」
すっとぼけた顔でエミリが俺の腕にぶら下がって来るみたいに腕をさらに強く掴み絡ませてくる。
「だ、だから。あんなこと言って。」
もー、なに照れてんだよ。俺…、
「だって、あの人に宮野を取られたくないもーん。」
頭を俺の肩にスリスリしてくる。お前は猫か!
「だからさ、俺たち別にちゃんと付き合ってる訳じゃないだろ?」
ぷぅっとほっぺを膨らましてふて腐れた顔が不覚にも可愛いだなんて思いそうであわてて自分に突っ込む。
アザとかわいい小悪魔に騙されんな。可愛いのは認めるけど。
認めんのかよ、オイ…。
「じゃあ、ちゃんとってどんなの?」
「だから…。それは…」
ドギマギしてる俺に余裕な顔でエミリがニヤニヤした顔を向ける。
「あたしたち、もうキスもしたのに?」
「だ、だからそれは…。」
「じゃあこれからどっかでそのキスの続きでもする?」
「アホか。」
「もー。アホって言わないで。
そうだ、美味しいスイーツのお店見つけたの。行こ?エミリ奢る。」
「は?なんだよ急に。」
「急じゃないよ?ラインしたじゃん?」
「え?」
スマホを確認すると確かにメッセージが、来てた。
「あ、ゴメン、今みた。」
「なに?そんな扱い?まあいいや、行こ?」
掴んだ裾をぐいぐい引っ張り俺は無理やりエミリに連れて行かれる。抱えられた俺の腕がエミリの柔らかい胸にあたってる。見た目よりあるんだな、なんてちょっとだけ女を意識したりして。ナイナイ。それは無い。
こんな小悪魔の小娘。妹みたいな奴に…。
いつもは土日にデートだけど今日は平日だ。たまたまバイトがなくてよかったけど。結局エミリに無理やりつれられて原宿までやって来た。
明日も早いしエミリだって学校だし。それを理由に今日は早めに解散だ。
それにしてもエミリの奴、ホント自由な奴だ。
やっぱり俺は予想通りこの妹みたいなエミリに今日も振り回されっぱなしだ。
それよりも。
あんな風に先に帰ってしまった京香さんのことが気になって仕方ない。
エミリとのこと、誤解したんだろうか。
俺と京香さんがどうにかなるとは思えないけれど、やっぱり勘違いされたままなのは納得いかない。
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