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妹なんかじゃない
大学の最寄りの駅につくと、みたことのある後ろ姿。エミリだ。エミリが俺を待ってた。
「宮野!?」
「あれ?エミリ、どうした?」
「どうしたって、驚かそうと思ってずっと待ってたんだよ。」
満面の笑みを浮かべて俺を見てくるエミリを驚いた顔で見ている京香さん。これは、不味い…。
そうじゃ、ないんだ。違うんだ、これは…。
「え?っと…彼女?いたんだ。」
お互いの笑顔の奥に気まずさが見え隠れする…。
「あぁ、そんなんじゃないよ。
彼女は…、友達の妹…。そう、妹。」
とっさにそんなことを言った。まあ、事実な訳だし。
「妹…?」
「そうそう、だから俺の妹…みたいな…?もん…?
そう、彼女は俺の妹みたいなもんだよ。友達の妹なんだけど。なんか俺、懐かれてる。」
エミリがムスッとした顔で俺を睨み付ける。
「エミリは宮野の妹なんかじゃないもん。」
睨み付ける顔が京香さんに刺さる。
「で?そこのあんたは誰?宮野とどんな関係?」
「こらエミリ!その口のきき方!」
「だってぇ…」
いじけてうわめづかいでこっちを見てくる。
「ふーん、こういう人が好みなんだ、宮野は。女の色気にやられたか。こういう女とヤりたいんだ」
「ば、バカ!ちがっっ、やめろ…。」
「えー?違うの?タイプじゃないか」
「え、いや、ちがくは…」
エミリの意地悪な小悪魔発言にあたふたする俺はもう、どうしていいのかわからない。
「あたしは結構タイプかな。好きよ?宮野くんみたいな人…。」
隣でクスッと笑う京香さんにエミリが睨み返す。
な、なんなんだよ今の…。
それじゃ、京香さんが俺を好きみたいじゃん…。
俺の手に追えない二人の女に目の前で心を弄ばれてるような気がして、俺はもう黙るばかりだ。
「なんかマジムカつくぅ。」
「好きなんだね、彼の事。」
「好きだよ、悪いか。」
「なんかカワイっっ。」
京香さんがエミリの鼻先を人差し指でツンツンしたあと、エミリの柔らかいほっぺを人差し指と親指で軽くつまんだ。
「ちょっとぉ、バカにしてる?」
「してないよ?ただ本当に可愛いなって。」
「ちょっとあんた、ライバルに向かって随分余裕だね。そうやっていい女ぶっちゃってさ。そうやって胸元ちらつかせて色気振り撒いてイケメンの宮野誑かして。ヤリもくかよ。」
「おい、やめろって。エミリ!」
「いいのいいの。気にしないで?」
クスクス笑う京香さんとふて腐れるエミリとどうしていいかわからない俺…。
「じゃあ、あたしはこれで。」
京香さんが爽やかに去っていく。
取り残された俺と、俺の服の裾をしっかり掴むエミリが京香さんの後ろ姿を見送る。
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