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星空友の会
「昨日はどうだった?あのあとは、あの子のご機嫌斜めはなおったの?」
また俺の隣に座ってきた京香さんがそんな風に聞いてきた。
ってかさ、どういうつもり?これじゃ俺、勘違いしたくなりますけど?
大講義室は広くて余るほど席がある。座る席は別に決まってる訳じゃないし。どこに座っても自由なわけで、空席もたくさんあるのに、当然のように俺を見つけるとこうしてやってきて当然のように隣に座ってくる。
まあ、大体こういうのって自然と決まってくるんだけどね…。
静かな教室に響くインカム越しの教授の声をなんとなく遠くに聴きつつ、俺はそれよりも隣から漂ってくる甘い香りにクラクラしながら、時折その横顔を盗み見ていた。
多分、気づいてるよな、俺の視線…。時々、目の端で俺の様子を気にかけては不自然に何度も瞬きしてる。
いいんだ、気づかれたって。
「ねぇ、宮野くんはサークルって入ってる?」
「え、いや。特には。」
「じゃあ、よかったらちょっと見に来てみない?」
誘われてついてきたサークルは『星空友の会』
「なんだこれ。」
「これはね、夜空の星のよく見えるところに行ってただ星を観測するサークルなの。」
「へー。」
「なんか、素敵でしょ?」
って微笑む君の笑顔の方が俺にとっては素敵に思えるんですけど。
そうして俺は星空友の会のメンバーになった。
「手始めに、今週末、河川敷でレジャーシートを敷いて寝転んで星を見るって奴をやるんだけど、来る?」
そう話しかけてきたのは見た目も話し方もスマートなイケメンの先輩。どうやら同好会の会長らしい。
「京香も来るんだよな?」
「そのつもり」
おいおい、なんだよ、その親しげな名前呼びは。それに。彼を見つめてる京香さんのいつもと違う眼差しを俺は見逃さなかった。
なんだよ、もしかして…?
よそ見をしてる俺の視線を遮るようにしてその彼が視界に割り込んできた。
プリントアウトした紙媒体の資料を手渡された。なんか、手作りの栞っぽくてエモい。
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