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小悪魔的なその瞳
待ち合わせのカフェが見えてきた。
店の外の歩道を歩く俺を見つけたエミリが近づいてくる俺に気付き、ガラス越しに大きく手を振る。
溢れそうなほどの満面の笑みを浮かべて。
そんなにはしゃぐなよ。こっちが恥ずかしくなる…。
うつむき加減で目だけあわせると小さく会釈して店の窓の外から遠慮がちに手を上げ、同時にカフェの自動ドアが開いた。
あの日、笹木ちゃんから連絡が来て。
『こっぴどく振られたらエミリも諦めつくと思う。』
そんなメッセージをもらった。
俺のどこがよくて?しかも会ったのあの時が初めてだし。話したの、ほんの2、3分だけど…。
結局俺は会うことにした。
会ってちゃんと断ろう。そのつもりで今日はやって来た。
店に入ったとたんに薫るコーヒー豆のいい匂いが俺をふわっと包みこむ。
その香りが俺を余計にドキドキさせた。
席の方に近づくとエミリが嬉しそうな顔で俺を手招きしてくる。
「ヤッホ。宮野!」
やっぱり予想通りの一言目はそんな感じだった。
笹木ちゃんの隣にいるエミリはあの時の印象のまんまだった…。
露出度の高い私服に身を纏うその着丈の短い服の裾でチラチラと見え隠れしてるへそがかえってイヤらしい。大きく開き、ズレた襟元から片方の肩が丸見えだ。スケスケのヒラヒラしたスカートみたいなものの下に履いたダメージパンツの太もも辺りの裂けた穴から生々しい肌が所々見えている。
とても高校生とは思えないファッションだ。
思わず視線がそちらにばかり行ってしまい、どこをみながら話していいのか迷う。
子供の頃から、話す時はその人の目を見ろと厳しい親父に耳にタコが出来るほど聞かされてきた事をふと思い出し、自分を律する。
キラキラした小悪魔な二つの瞳がじっとこっちを見てる。そのくいっと上がった睫が不自然に重たそうに揺れてる。これから俺に振られるなんて、これっぽっちも思ってないような明るい笑顔だ。
戸惑いながらゆっくり近づき声をかけた。
「お待たせ…」
時間よりもだいぶ早く来たつもりだったけれどすでにもう、待ち合わせしたカフェに二人は先に来て座ってた。
向かい合わせに腰かけると、笹木さんが眉毛を八の字にして謝ってきた。
そんな顔、されたらさ。断るに断れなくなる…。
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