7人が本棚に入れています
本棚に追加
高校を卒業してすぐだった。
大学の入学式の前に買い物ついでに大学まで試しに行ってみたりして。
ついでに渋谷や新宿なんかをブラブラして帰ってきた。
そんな帰り道。いつも使う駅でばったり会ったのは、笹木ちゃん。そしてそのとなりには可愛い高校生の女の子。笹木ちゃんの妹のエミリだ。
この時俺は初めてエミリに会った。
なのになぜか、今日こうしてそのエミリと待ち合わせをしている。
もう一度言う。エミリとは、今日でまだ会うのは二回目だ。
なぜか俺はこのエミリに気に入られたらしい。
『一回だけ会ってやってよ、振っちゃっていいから。言ったら聞かないの、この子…』
笹木ちゃんのそんな言葉に、仕方なく…。今日俺はこうしてここにいる。
「ごめんね~、宮野、忙しいのにわざわざ」
すると隣のエミリも口調を真似して。
「ごめんね~、宮野、絶対来てくれると思ってた」
眉毛を下げて口調を真似してそう言う割に、口許がニヒルに笑いイタズラな小悪魔的なあの笑顔。
来てくれると思ってた、とか。人をおちょくってるとしか思えない。
「いいよ?宮野、正直に。振るならおもいっきり振っちゃっていいからね。
本人から言われないとわかんないんだから、この子は。あたしは何度も言ったんだよ?無理だよって」
申し訳なさそうに笹木ちゃんが俺に訴えてくる。
「あ、あぁ…」
苦笑いするしかない俺。悪いけど振るつもりで来てるから。
「いいよ?宮野、今すぐオッケーしちゃって。本人から言われないとわかんないんだから、オネェちゃんは。あたしは言ったんだよ?絶対オッケーだって。ね?宮野?」
エミリが笹木ちゃんの口調を真似てそんなことを言ってきた。
「ハハハ…」
ますます苦笑いだ。
なんだこりゃ…。参ったな…。この流れで、俺は今、何を言えばいい?
「すいません、カフェラテを一つお願いします。」
とりあえず飲み物を注文して、気を落ち着かせる。
困った顔の笹木ちゃんと、ワクワクして待ってるエミリが二人して俺の顔をじっと見てくるから俺はもう、どこをみていいのかわからない。
最初のコメントを投稿しよう!