お試し彼氏

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お試し彼氏

「今日からお試し利用の彼氏ね。ちゃんと返すから。1ヶ月後に。」  そうして俺たちは1ヶ月だけのお試し利用の?彼氏彼女になった。  結局その日は、1日エミリに振り回されっぱなしでエミリの思うつぼ、エミリの思いどおりに事が運び、まんまと騙されたような形でなぜかその後一緒にご飯を食べて帰ってきた。  笹木さんがメッセージを寄越した。 『ごめんね、断れなかった? あたしからよく言っとくよ。ほんとごめん。』 『そんなに謝らないでよ。まあ、友達として付き合うことにするよ。 どうせ1ヶ月だけだし。 こんなの、ただの恋人ごっこみたいなもんだよ。 1ヶ月だけのお試しだって。 だから本当の恋人じゃないから。 安心して?』  そう、返した。 『そっか。まあ、宮野なら、あたしも安心だけどさぁ…』  笹木さんにそんな風に言われちゃ、俺も変なことはできない。まあ、変なことなんかする気もないし…。  いいのかな、こんなんで…。いいだろ。これで。1ヶ月したらお試しは終了だ。  あの子をもてあそぶつもりなんか毛頭ない。普通に友達として仲良くすればいい。  あの子に対して恋心なんてない。おちょくられて唐突なことされて心臓がビビっただけだ。きっとそうに決まってる。だからもてあそぶとか、彼女を適当に扱ってひどい目に合わせるつもりも更々ない。  ちょっとママゴトみたいに一緒にデートごっこみたいなことをして、楽しく1ヶ月過ごせばそれでいい。  いかがわしいことをする目的でなく、健全なデートするだけなら、いいだろ?なんてね。  お試し、なんて言いつつ、それでもなんだか彼氏って響きに顔がニヤける。  なんだよ、結構俺も、じつは楽しみにしてんじゃん…。て、思ってしまってる。  エミリの事は別に嫌いじゃないし、顔だって可愛らしい。  試してみるだけなら、いいよな?なんて。  俺にもついに出来たか。彼女。まあ…、本当の彼女じゃねぇけど…?。  雰囲気だけでも楽しめればいい。どうせ彼女いなくて寂しかったしな…。  なんて思っていた俺が、1ヶ月後にあんな風になるなんて、この時は少しも思わなかった。
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