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1ヶ月だけの付き合いだとは言いつつも、毎日あうわけじゃないし、会っても週に一度程度、多くて二回がいいところだ。
会うと言ってもどっかで待ち合わせをしてご飯を食べたり、映画なんかを見たりして、ウインドウショッピング、宛もなくただ街をブラブラして夜には帰ってくる。まあ、ベタだけど、こんなもんだろ?デートって。ママゴトみたいな恋愛ごっこだな、これ…。
だけど、なんか焦がれるような恋心とも違うし、どっちかって言うと手を焼く妹みたいなもんだしな…。
「宮野はさ、真面目だね。」
待ち合わせをしてなんとなく歩きだした俺の顔を覗き込みながらエミリがそんなことを言う。
「え?なんで?」
「なんでって、なんもしてこないし。デートって言うよりか、小学生同士のただのお出かけみたい」
「は?小学生は子供同士でお出かけなんかしないだろ?せめて中学生って言えよ」
「フフフ、なんか受けるんですけど。言うほど対して変わんないし。」
「なんだよ、つまんないならもう会わないけど?」
「そんなこと言ってないよ。ねぇ、手、繋ご?」
腕に腕を絡めてくる。顔を肩にスリスリしてくるし。俺ばっかりドギマギしてる。
「は?やめろよ、恥ずかしいって」
「なんでよ、普通だよ?こんなの」
無理やり手を掴まれた。指の間にスルリと細い指が入ってきて擽ったい。
これって世に言う恋人繋ぎじゃん…。
照れて、やめろよなんて言っておきながら、実は少しだけ嬉しかったりする…。こんな感じなのか、女の子と手を繋ぐの。悪く、ない…。
顔を赤らめる俺を覗き込むようにして面白そうに観察してくる。
「可愛いね、なんか照れてる宮野!」
「うるセェ…」
俺の腕に当たるエミリの腕や顔が気になって仕方ない。
「ねぇ、キスもしよっか?」
「しねぇよ。て言うか、町んなかじゃん」
「なんで?だめ?」
「だめに決まってんだろ。こんな駅の前で…!それにまだ本当の彼氏じゃねぇし。」
「ん?今、まだって言った?」
「あ…、違う。そうじゃなくて…」
「言ったよね?今、まだ…って。じゃあそのうち本当の彼氏になったらする?」
「じゃあ、なったら…な…」
「じゃあ早くなってよ。早く好きになってぇ…」
「なってよってなるもんじゃねぇだろ?どこがいいんだよ、俺なんか」
「それは内緒」
「なんだそりゃ」
「けど、もう、しちゃったもんね。あたしたち」
「あんなのしたうちに入らねぇよ」
「入るでしょ」
「はいらねぇ。」
俺は付き合ったことがないんだから。そういうタイミングだとか、そんな雰囲気に持っていくとか、そんなのまるで素人だ。それに、人前で、こんな人混みの中で、キスとか、あり得んだろ…。
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