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また、された
線路沿いの歩道を二人でのんびり歩く。坂をゆっくりと歩いて上がっていき、沢山の木が生い茂るような、都会の真ん中とは思えない大きな公園の森を抜けると開けたところに池が見えてきた。スワンボートなんかが浮いてる。まさにデートスポットっぽいやつだ。
「あ、あれ乗ろ?」
エミリの繋がれた手にぐいぐい引っ張られるようにして船着き場にやってきた。
そばにあるプレハブ小屋のおじさんにエミリがお金を払い強制的にそれに乗ることになった。
乗るのはスワンの方かと思いきや、普通の手漕ぎのボートの方だった。
「え?こっち?」
「だって、手漕ぎの方がラブラブデートっぽいじゃん。スワンはハンドルもって足漕ぎだし…。横並びだし。向かい合って見つめ合えないじゃん…」
って、意味がわからない。なに?ラブラブデートっぽいって。向かい合えないって?
オールを渡され俺が漕ぐ羽目になった。当然、そう、なるよな…。
これが結構キツくて疲れる。手先だけじゃ全然だめだ。体重をのせコツをつかむまで結構大変だった。これじゃ筋トレで腹筋鍛えてるのと変わらない。マジでキツイ…。
「宮野、頑張って!」
しかめっ面で必死になって漕いでる俺を楽しそうにエミリが見てくる。
「その必死な顔…、好き…。」
「え?」
「その、息が上がって苦しそうな顔。声とかもなんか色っぽいね…」
「ば…、バカ言うなよ。こっちは必死だってのに…。」
向かい合って、こんなにも近い距離で、はぁはぁ言いながら上体が前後に揺れる。それを下からじっとエミリに見られてる。
「なんか、宮野のその顔、すごくやらしいね…。あたしたち向かい合って、エッチなことヤってるみたい。へへへ」
「アホか…」
そういいつつ顔があつくなる。
この狭い空間でこんなにも密着する距離で向かい合い、俺の股の開いた足の折れた膝の間にちょこんと座って俺を見上げてくるその、上目遣いのエミリの顔が今にもキスしてきそうな雰囲気に急にドキドキしてくる。
目が合うと気まずくて目をそらす。息の上がった俺の吐く息がエミリの顔にかかりそうでますます気まずい。
「そのしかめっ面、なんかキュンキュンする…」
反らした俺の横顔にエミリの下から見上げる視線がさっきから刺さってきて擽ったくてしかたない。
座ったまま延び上がるようにしてエミリが顔を近づけてきた。
「な、なにするんだよ、危ないからちゃんと座ってて…」
「へへへ。いま、キスされると思ったでしょ…」
「だからやめろって…」
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