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遠くから声が聞こえてくる。見覚えのあるメガネがこちらに向かって走ってくるのが見える。
「君は、……メガネっ子!」
とっさのことで名前が出てこない。
「リブレです! そのモンスターには、これが効きます!」
リブレは小さな袋から何かを取り出し、モンスターに投げつけた。
「ぐ、あ、おおお!」
モンスターはうめき声を上げ、ゆっくりと地面に倒れていった。
「ふー、間に合ってよかった……」
リブレが手で汗を拭う。
ソアはリブレに向かって言った。
「リブレ、来てくれたのか」
「はい。虫は苦手ですけど、冒険者になるんだったら苦手は克服しないとと思って……。それで、僕にも何かできないかと思って森のことを調べてたんです。そしたらこのモンスターのことが出てきたので、慌てて花屋に行ってリラさんに花の種を分けてもらったんです」
「そうか、ありがとう……」
ソアがリブレに礼を言うと、その隣でエノンが複雑そうな顔をしていた。
「どうしたエノン?」
「ふっ、情報屋の私がこのモンスターのことを知らなかったなんて……。しかも年下に先を越されるなんて、私もまだまだ力不足ってことかしら」
どうやら相当に自信があったようだ。
「そうだ、他のみんなは……」
ソアたちはそれぞれ怪我をした3人に駆け寄る。
「……うっ、ソア、無事か?」
「ああ、俺は大丈夫だ。コルテこそ大丈夫か?」
「俺も、問題ない。それより他の皆は?」
ソアはエノンとリブレに視線を向ける。
「こっちは大丈夫、背中を打ち付けただけで大事にはいたってないみたい」
「そうか、良かった……」
「こっちは大変ですよ!」
「何!?」
リブレの言葉に慌ててソアはフィーンに駆け寄った。
「フィーン、フィーン!」
ソアがフィーンに呼びかける。返事はない。
「フィーン、大丈夫か! どうしたんだ!」
「もしかして、さっき頭から強く叩き落とされたから……」
ファームの介抱をしながらエノンが放った一言に、ソアは血の気が引くのを感じた。
これが他の仲間だったらフィーンの魔法ですぐに治してもらえるのに、フィーン自体が意識がないのであればどうやって治そうというのだろう。
「フィーン、しっかりしてくれ!」
「どうしたんだ、君たち」
ソアたちは声のした方に振り返る。先程の花屋のオーナーと思われる老人がソアたちを見ていた。
「……おや?」
すると老人はフィーンに近づき腰を下ろす。
「頭をやられたか。この辺りのモンスターは凶暴だからな。なに、これを使えば大丈夫だ」
老人は持っていた花をフィーンの頭の上で振る。すると、フィーンの頭を花びらが包み込み、いい香りを漂わせた。傷がみるみるなくなっていく。
しばらくすると、フィーンの目が開いた。
「うっ……」
「フィーン!?」
「ん、ソア……。よかった、無事だった……」
「フィーン!」
ソアがフィーンの手を握ると、フィーンは目を細めてソアの手を握り返した。
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