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いきなりパーティー解散(しかもソアだけ)宣言がされたのだ。
しばらく放心状態のソアだったが我に返り、抗議した。
「どういうことだよ! いきなり解散(しかも俺だけ)だなんて!」
「今朝ルールが変わったんだよ……」
「ルールが?」
この世界には冒険者のための公式ルールというのが存在している。いかなる冒険者もその公式ルールに則って冒険をしないといけない。
基本的なものでいうと、冒険者は必ず冒険者登録所に名前を登録しないといけないとか、冒険者は30レベルを超えないと一人で旅をしてはいけないとか、武器・防具はパーティー登録されている公式のパーティーにのみ許可される、などなど、冒険者が安心・安全に旅ができるよう、また他の冒険者と公平さを保つためのルールだそうだ。
「これ、さっき受付でもらったんだ」
コルテが冒険者登録所から宿に届いたという『冒険者のためのパーティー編成に関するルール変更のお知らせ』なる用紙を手渡してきた。
早速読んでみた。
『冒険者のためのパーティー編成に関するルール変更のお知らせ
その一、レベル30以内のパーティーは必ず4人以上でパーティー編成所にて登録すること
その二、パーティー編成はレベル差が4レベル以内の者同士を仲間とすること、ただし成長過程でレベルに差が出た場合はこの限りではない』
「……」
「というわけだ。残念だ。非常に残念だ」
思い切り落胆という声を出し、いかにも落ち込んでますというアピールをするコルテ。
「いやいや、ちょっと待って、いくらなんでも急すぎるよ!」
ソアがまたも抗議の声を上げた。
「仕方ないじゃん、ルールが変わったんだから。お前レベル5だろ。オレらもう16とかだぜ」
槍使いのファームが淡々と答える。
「オレたちだって結構痛手なんだぜ。仲間をもう一人見つけないといけなくなったし、探知魔法使えるのお前だけなんだもんな」
「そうそう。大変なのは君だけじゃないって」
ファームの言葉にフィーンが同調する。のんきにケーキなんか食べながら。
「いや、登録しなかったらいいんじゃ……」
「でもそれだと武器や防具も買えないだろ」
「それに、テレポートも使えないしねえ」
ファームとフィーンの言葉にソアはそうだったとうなだれる。パーティー編成のなんと面倒なことか。
「まあ、そう落ち込むな。むしろこれはチャンスだぞ、ソア」
「チャンス?」
コルテの言葉にソアが首を傾げる。コルテは頷く。
「自分よりレベルの弱い奴を仲間にすればいい。そうすれば必然的にお前がリーダーになれる」
「リーダー……」
ソアは想像してみた。自分がリーダーになる。周りの仲間たちが自分に尊敬の眼差しを向けている。うん、悪くないかもしれない。
こうしてパーティーは解散した。
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